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第23話
夜が明け日が昇り、俺は翔琉が調べたという都内で一番の、男性Ωでも可能である最新の設備と最高のドクターがいるとされるセレブ産婦人科へと足を運んだ。
セレブや芸能人たちも御用達のそこは、まず一般人はかかることができない為、待ち合い室で翔琉がいても、変な詮索をされることはない。
かえって、あの芸能人が極秘出産か、などとこちらが驚くことの方が多かったくらいだ。
「高遠さん、おめでとうございます。妊娠三ヵ月です」
血液検査、触診、内診、エコー検査の全てを終え、俺は付き添ってくれた翔琉と共にその朗報を専門家から改めて聞いていた。
やはりここ最近の俺の体調不良は、悪阻が始まった証だったようだ。
「母胎が、きちんとΩの身体になっていますよ。それに関しては、安心して下さい」
ニコニコと告げる男性医師に、俺はやはりΩだったのかと思う。
というか、それに関しては「安心して下さい」って……一体、どういうことだ?
他には、異常があるというのだろうか。
隣りの翔琉も、ポーカーフェイスを貫いているが、どこか不安そうだ。
見る見る内に不安の色を隠せなくなった俺に、若干翔琉より年が上くらいであろうイケメン医師が優しく微笑み、こちらの欲していた答えを口にした。
「あ、異常とかじゃなくてですね。実は先程のエコー検査の時に、細かく説明できなかったのですが……」
診察の際、後ほどエコー写真をお渡ししますと言われていたそれを俺は手渡される。
これが、俺と翔琉の子ども――。
エコー検査の時に見た、独りの命の芽生えに感動し、俺はとにかく涙が止まらなかった。
まじまじとそれを見つめると、また先程の感動が蘇り、涙が滲む。
……って、え?!
これ、は?!!
ハッとして、俺はすぐ様医師の方へ顔を上げる。
「あ、のっ!」
俺が声を上げるのと、医師が口を開くのとは、ほぼ同時であった。
「高遠さんのお腹にいるのは、双子です。分かりずらいですよね、この写真ですと」
ニコリと微笑まれ、俺は絶句した。
隣りに座る翔琉は黙ってこそいたが、その様子は嬉々としており、明らかに上機嫌なオーラを出している。
双子が欲しかった翔琉にとって、この事実は間違いなく嬉しい知らせだろう。
「ただ、双子の出産には様々な危険が伴います。特に、男性Ωは非常に注意が必要です」
厳しい顔で医師から念を押され、改めて妊娠は本当に奇跡なのだと知る。
「ですから、妊娠中の生活については十分、気を付けて下さい。あ、今はまだ安定期ではないので、旦那様はイチャイチャを控えて下さいね?」
突然、俺たち二人は夜の営みへドクターストップをかけられる。
昨日、そう言えば翔琉は寸前のところで、マネージャーからの電話でお預けを喰らっていたことに気がつく。
思えばそれ以前も、俺が体調を崩してから一切の情事をしていなかった為、だいぶ翔琉は欲求不満だろう。
安定期に入るまで、まだ当分はある。
チラリと横目で翔琉を見つめると、腕を組み、どこか不満そうな顔をしていた。
こ、これは……!
浮気は多分、しないと思うが何とかせねば……。
密かにそう、俺は思ったのであった。
「次回は、父子手帳を区役所で貰って来てから来院して下さいね」
医師は、不機嫌な翔琉に一切触れることなく診療の終わりを無情にも告げたのである。
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