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第37話

すると、桜雅がクスリと笑う。 「え? 俺、何か言い間違えましたか?」 今仕方発言した内容に、俺は不安を感じる。 「いや、高遠君もだいぶ成長したなと思って」 桜雅の言葉に、翔琉が反応するように視線を向けた。 「益々、これからが楽しみだな、翔琉」 「余計なことを。そんなことは、俺だけが分かっていればいいんだ」 ふいと桜雅から顔を背けると、繋いでいた俺の手を前へ強く引き、境内に向かって歩き出す。 「ねぇ、桜雅。あの二人って、聞いていた以上にラブラブなんだね」 二人の後ろ姿を眺めながら、桃緯は桜雅に言った。 「まあ、双子を妊娠するくらいだから、相当ラブラブなんだろう。というか、あれは翔琉の強い執念の賜物だな」 苦笑しながら桜雅は答える。 「へぇ。高遠君、チョー愛されてるんだね。龍ヶ崎さんて、もっとクールで恋愛とか面倒くさいですっていうイメージだったけど」 以前より桜雅から噂を聞いていた桃緯は、良い方へ予想を裏切られたと感じていた。 「お互いが良い意味で影響し合って、良い方向へ変わっていったんだ。つまり、お互いが――運命の番だったってことだろう? 俺たちのように、さ」 桃緯より一歩前へ出た桜雅は、眼前に掌を差し出す。 「お手をどうぞ、桃緯」 「――桜雅は、俺の番というより……出逢った頃からずっと、俺の憧れのお義兄ちゃんだけど」 ゆっくり桃緯は差し出された手を取る。 「義兄(あに)か……」 苦笑して桜雅は言う。 「俺たちは全く血が繋がっていないし、何なら四月生まれと三月生まれで同級生だから、義兄とか関係ないんだけどな」 親同士の再婚により、桜雅と桃緯は小学二年生の時、義兄弟となった。この時からずっと、桃緯は桜雅の父親の姓である“久我原”を名乗っている。 だから、戸籍上での家族歴はおおよそ二十年は経つ。 「そして、何より俺たちはもう、本当に義兄弟じゃなくなるだろう?」 真剣な顔して告げる桜雅の言葉の意味に、桃緯は頬を赤く染めた。 「もうすぐ、二人の可愛い子どもが産まれてくるんだから。少なくとも出逢った時から、俺は桃緯に運命を感じていたよ」 「何ソレ。‪α‬には、そんな番察知センサーがついてるの? 俺は感じてなかったけど」 照れ隠しにわざと素っ気なく桃緯は言って、すぐ様桜雅の腕にギュッと抱き着いた。 「ウソ。――俺だって、本当は……ずっと運命、感じてたよ」 こっそりそうして桃緯は囁くと、二人は顔を見合わせながら微笑んだ。 「さぁ、それでは安産祈願のついでに、世間的に色々と面倒くさいことになりそうなあの二人を助けに行くとしようか」 桜雅の提案に桃緯も同意し、二人を追い掛けたのであった。

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