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第41話

「――って、俺こんなこと言って、かなりダサいな」 恥ずかしそうに頭を抱えながら、翔琉は俺から視線を外す。 「かなり情けないことに、俺、ずっとここのところ独りで浮かれていたんだと思う」 突然の告白に、俺は横を向いたままの翔琉をじっと見つめた。 「好きな相手が、俺の子どもを孕んでくれてさ。しかも、それが二人もだぞ? 体調的にかなり大変だろうことは分かるんだが、やはり……嬉しいものだろう?」 チラリと視線だけをこちらへ向けた翔琉は、こっそり顔が赤らんでいるように見える。 照れているのだろう。 貴重な翔琉の様子に、先ほどまで荒いでいた俺は、すっかりこの男を自分から抱き締めてキスしたくなっていた。 「……その、俺と好きな相手との確実な絆が――子どもが産まれるんだから、嬉しい以外他にないだろうが」 悔しそうに自問自答する翔琉を、俺は膝立ちしてその肩を強く抱き締める。 「俺の方こそ、取り乱してすみませんでした。夫夫って、俺……対等でなければならないものだと思っていて」 「対等でなければ、か」 俺の腕の中に頭を預けた翔琉は、苦笑しながら返す。 「必ずしも、対等じゃなくていいんだ。その時々で、お互いが足らないところを支え合って生きていくのが、夫夫の形だと俺は思うんだがな」 持論を述べた翔琉は、そう言って俺のやや膨らんだ腹部の影からこちらを仰ぎ見る。 ああ、そうか。 対等になろうとしなくていいんだ。 お互いが足りないところを支え合って、共に生きていくのが夫夫なんだ。 独り意気込み過ぎていたことに、ようやく俺は気が付く。 「颯斗が俺を助けてくれたように、俺も颯斗が困っていたら助けたい。今もこれからも、その想いは変わらない」 グレーの瞳が柔らかく微笑む。 絶対にその瞳は、俺を裏切らない特別なものなのだと確信する。 「それは颯斗だけでなく、これから産まれてくる俺たちの子どもたちに対してもそうだ」 服の上から、翔琉は愛おしそうに膨らみを撫でた。 「俺たちの子ども、順調に育っているようだな」 翔琉はそう言って、まだ胎動もない俺のそこへ耳を充てる。 「まだ、安定期に入ったばかりなので胎動はないですよ」 クスリと俺は笑う。 「そうか、残念だな」 俺の腹部へ顔を委ねたまま、翔琉はその腹部を何度も大事そうに、上から下へ撫でていた。 「――翔琉」 不意に俺は、腹部で顔を埋める男の名を呼んだ。 視線のみ翔琉は俺の方へ向ける。 「あ、のっ……俺、もう、その……安定期に……」 顔を真っ赤にし、そこまで口にしたところで、翔琉は俺からゆっくり顔を離す。 早速、俺の言わんとしたことを全て察知した翔琉は、ニヤリといつもの意地悪そうな笑みを口の端に浮かべた。

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