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第59話

「翔琉、今日はご馳走様でした」 銀座三ツ星シェフのいる高級レストランの個室でお祝い料理を堪能した俺たちは、十七時前にはタワーマンションへと到着した。 個室を予約してくれたお陰で、周囲に気兼ねすることなく家族水入らずで美味しい料理を自分たちのペースで食べることができたのだ。 終始ご機嫌だった俺は、運転席の翔琉へお礼を告げる。 「いいえ、どういたしまして」 バックで駐車しながら、言葉少なに翔琉は返す。 スムーズに所定の場所へ車が停り、俺たちは独りずつ子どもを抱き上げ、最上階直通のエレベーターへと乗り込んだ。 長時間の外出はさすがに疲れたのか、双子たちは今、二人共それぞれの腕の中で気持ち良さそうに眠っている。 めずらしく俺たちは、エレベーターの中で無言だった。 特に翔琉はそのことに何も感じていないようだ。 だが俺は、不思議と独り高揚感を隠せず、斜め上に見える翔琉の顔をちらちらと盗み見る。 気が付いていないのか、日頃から大勢の人間に視線を向けられているのに馴れているせいか、翔琉は一度もこちらを見ようとはしない。 いつもであれば、エレベーターが閉まり次第、熱く俺のことを求めるはずだというのに。 否、俺……子どもたちがいるのに今、何を期待したんだ? 親、失格だろう。 ましてやもう、春から社会人にもなるというのに。 独り煩悩に葛藤していると、エレベーターが最上階へ到着したことを知らせる音がした。 「――颯斗?」 碧翔をギュッと抱き締めたまま降りようとしない俺に、翔琉が怪訝そうに声をかける。 「はっ、え……っ?!」 慌てて周囲を見渡した俺に、翔琉がエレベーターのドアを颯空を抱えていない左手で止めていたことに気が付く。 「家に着いたんだが……」 グレーの瞳を眇めて言う翔琉に、俺は小走りでエレベーターから降りる。 家の鍵を翔琉が開けると、眠っている双子をベビーベッドへ寝かせる為、俺たちは暗黙の了解でベッドルームへ直行した。 起こさないようにと、それぞれを慎重に寝かせていく。 俺たちの手から離れても尚、可愛い寝息を立て眠る二人に、俺は小さく安堵する。 そうして、やはり我が子は二人共本当に可愛い、などと親バカな気持ちで寝顔を眺めていた。 「俺の顔の次は、子どもたちの顔か?」 エレベーターで盗み見していたことが、やはり翔琉には気付かれていたようだ。 「比べるものが違うことは重々承知の上だが――それでもやはり、妬けるな」 俺の背後にぴたりと翔琉が密着する。ゴリゴリと、既に硬くなっている熱を俺の臀部の狭間に充てながらだ。 「なぁ、久しぶりにシたいんだが……」 耳朶を舐めるようにねっとりとした声色で囁いた翔琉は、父親でも旦那でもなく、恋人だった時のような甘い顔をする。 「っ!」 翔琉も同じ気持ちでいた事実に、歓喜で俺の全身は震えた。 「――いいか?」 グイグイと押し充てるソレは、スラックスの上からでもくっきりとその立派な雄の輪郭が意識できるほどだ。 きゅんと俺の熱雄も反応し、布地の中で前をどろりと濡らす。

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