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第61話
「ねぇ、これぱぱ?」
リビングのソファの上、俺を挟んで右に碧翔。左に颯空が座りプロジェクターにドラマを映して観ていた。
最近自分の言いたいことがはっきり言えるようになった碧翔は、八月に五歳になったばかり。
まだまだ赤ちゃんだった時のように甘えん坊だが、自分でできることも少しずつ増えてきている。
社会人四年目を迎えた俺は、ようやく最近双子の子育てと仕事の両立のコツを掴みかけてきているように思う。
「あおと知らないの?」
俺が答えるより先に颯空が言った。
二卵性双生児ということもあり、この頃は翔琉ジュニアらしい片鱗をその全てに見せている。
有名人やセレブのご子息が大勢通う幼稚舎受験に合格し、今年で年中であるが、碧翔の話だと男女共にモテモテで全く近寄れないのだという。
我が子ながらその将来が末恐ろしい。
きっと、間違いなく颯空は旦那の血が色濃く流れているのだと。
「なにを?」
ガラス玉のような透き通ったグレーの瞳をまん丸くさせ、碧翔は身を乗り出して反対側へ座る颯空を覗き込む。
颯空曰く、碧翔は可愛い過ぎて幼稚舎のアイドルで、悪い虫がつかないか常に心配なのだという。
しかも本人にその自覚がないのだから、俺が“弟”として周囲を注意していなければと話していた。
しっかり者すぎて親としては有難いが、少々ブラコンの気があるのではと俺は思っている。
まあ、兄弟仲悪いよりは安心なので良しとしているのだが。
「ママは、パパが出ているどらま しかみないんだよ?」
当然だよと颯空が言う。
五歳児の観察力の鋭さは侮れないと思った。
独り俺はドキドキしてしまう。
まさかバレていたなんて、と。
「そっかあ! あおとのぱぱ、かっこいいもんね! しかたないよね!」
俺に似て少し鈍いのか、何の疑いもなく碧翔はそう言ってのける。
「パパもかっこいいけど、ボクだってかっこいいでしょう?」
張り合うように真面目な顔して颯空は返す。
こういうところはまだまだ子どもだなと、俺は微笑ましく思う。
しかし、だいぶ自我が強くなってきたなとも感じていた。
「そらはちがうよ! そらはぼくとおなじでねんちゅうさんだし、ぼくよりあとにうまれてきたおとうとなんだから、かっこよくないよ!」
何の躊躇いもなく碧翔に一蹴され、颯空は子どもながらに大きく肩を落とす。
泣くかなと一瞬俺は身構えたが、颯空は泣かずにぐっと眉間に皺を寄せ、耐えている様子が窺える。
可愛いなと俺は思った。
「まあまあ。二人共、俺の自慢のカッコイイ息子だよ」
そう言うと、俺は両腕を開き二人をそこへ呼び、それぞれ片腕で抱き締めた。
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