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第64話

「もしかして……甘やかされたかったのは、こっち――でしたか?」 ラグジュアリーブランドのバックルに手を掛けると、俺は大切な贈り物を開けるような仕草で翔琉の合せをおろした。 中からは、既に先端に染みを作った重量のあるものが布越しに顔を出す。 「……全く、この頃の颯斗は大胆でかなわないな」 無造作に頭を搔く翔琉の下着を、俺は躊躇いなく開帳する。 言った張本人も恥じらうことなく、いつも通り堂々としていた。 ぶるっと飛び出してきた翔琉の熱雄は、今にも弾けそうなほど隆々としており、視覚だけでこちらの雄まで達してしまいそうだ。 下着の中が酷く濡れていくのが分かる。 「大胆になったのは、翔琉のせいです」 片手では掴むことのできないそれを、俺は両手で包み込むように触れると、それだけで翔琉は大きく反応した。 「そうか。俺のせいか」 顔色ひとつ変えない翔琉の肩をトンと軽く右手で押しながら、俺は上体を起こす。 再びそうして熱の塊に手を添えると、その先端を口へ含んだ。 舌で転がしながら少しずつ俺の粘膜でその全てを懸命に咥えると、脈打つものが口腔を犯すようにぐうっと暈を増し抽挿を激しくする。 「……ぅう」 噎せるように何度も突かれたそれを、それでも夢中で口へ含み、追う。 「だったら俺も」 ぞくぞくするような色香を纏った翔琉は、グレーの流し目をこちらへ寄越す。 ああ、もう。 この瞳で見つめられたら俺、もっと……自分から翔琉を求めてしまう。 「俺も、颯斗のせいで――颯斗を知ったせいでもうずっと、俺のココは熱くなったままだ」 大きくなった熱が、言葉と同時に俺の粘液から退いていく。 「っは……っ」 顔を赤らめた俺は、大きな喪失感から無意識にグレーの瞳を持つ男を物欲しそうに見上げる。 「ほら、今もそうやってその瞳で俺を誘っている」 情欲で揺らめく瞳はまるで俺の方だと言わんばかりに、翔琉は俺の濡れた唇を親指で拭ってみせた。 「そんなこと……」 むしろそれは翔琉の方だ。 そう、思っているのに。 不完全燃焼の翔琉の熱雄が、俺の眼前で力強くしなるのを目撃し、喉がごくりと鳴る。 「そんなこと、あるだろう?」 微かに笑った翔琉の熱の元へ、再度俺は吸い寄せられるように無我夢中で舌を這わせていた。 無意識だった。 だから翔琉も笑ったのだろう。 もういい、と言われても離す気はなかった。 結局、噎せ返るほどに喉奥へ吐き出された大量の劣情を、俺はほぼ全て嚥下する。 否、こうしたかったのだ。 果てた雄はまだ硬度を保っていたが、翔琉は俺の口からゆっくり抜く。 白にまみれた充血した翔琉のそれは、あっという間に腹部へつくほど反り返る。 だが、それを翔琉は素早く布の中へ収めようとした。 「……どうして?」 縋るように俺は問うてしまう。 「この辺で自制しておかないと、颯斗の色香と大胆な行動に我慢が効かなくなる。大事な身体なのに」 衣服の乱れを直していた翔琉は、苦笑しながら言った。 「……でも!」 咄嗟に反論する俺を宥めるように、翔琉はその唇へ触れるだけのキスをする。

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