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第66話

そうして迎えたクリスマスイブ当日。 都内は朝から粉雪が舞い、今年のクリスマスは奇跡的にホワイトクリスマスとなりそうだと気象予報士がテレビで話していた。 いつの間にか翔琉の腕枕で眠っていた俺は、その腰も腹部も今朝酷く重く、痛みも感じる。 双子の時と比べてずっとお腹の中の子は軽いはずなのに、と思いながら前屈みになって腰を擦った。 ごにょごにょと胎動激しいこの子は、将来龍ヶ崎家一番のお転婆娘になりそうだ。 もう少しで逢えるね、などと心の中で呟きながら、俺はなだらかに膨らむお腹をゆったりとしたスエットの上から撫でる。 思えば碧翔と颯空の双子とは違い、お腹の中の子は無事に十月十日を迎えられそうだ。 前駆陣痛らしいものがこのところあり、眠れない夜が続いている。いよいよこの子との対面がすぐそこまで近付いているのだと思うと、それも感慨深い。 それでもやはり五年ぶりの出産に恐怖と緊張を覚えるが、前回に比べて二度陣痛が来ないことを考えると、ほんの少しだけその不安も和らいでいく。 昨夜も意識を飛ばした後、その痛みに目が醒め、翔琉を起こさないようベッドから抜け出し違和感をやり過ごしていた。 翔琉はそんな俺に付き添い腰を擦ったり、ベッドへ出たり入ったりを繰り返し、共に夜を明かしてくれたのだ。 本当……翔琉はずっと、出逢った時からこうして俺に寄り添って、俺のペースで愛してくれるんだから。 ずっと“好き”でいる以外、他に選択肢はないよなあ。 昨日から一ヵ月ほどの育休をもぎ取ったと話した翔琉は、きっとまた無理をしたのかもしれない。身体が酷く心配だが、俺の身体の方が心配だと返されてしまいそうだ。 翔琉を起こさないように。 細心の注意を払って、静かに俺はその腕の中から出る。 時刻は朝の七時をまわったところだ。 昨夜は朝方まで眠れなかったとはいえ、完全に寝坊である。 碧翔も颯空も今頃はもう子ども部屋から勝手に起きてきて、リビングで子ども番組を観ているだろう。 双子ということもあり、大概二人でいると我が子たちは大人しく過ごせる。 親としては非常にありがたいが、それでも泣いていないだろうかとか怪我をしていないだろうかなど心配は尽きない。 眠る翔琉をベッドルームへ遺し、俺は早足でリビングへ向かおうとする。 お腹の中の子がぐるりと勢いよく跳ねるのが分かった。 あ、痛い。 今の、すごく痛いかも。 鈍い痛みを感じながら俺はリビングのドアを開けた。 「はやとまま! おはよ! おなかすいた!」 開けるやいなや、可愛い二人の息子が元気よく俺の足元へ飛びついてくる。 「あお、あさはまんまるのおつきさまがいい!」 長男が両手を全力で振り上げ主張する。 真ん丸のお月様、つまりは目玉焼きのことだ。 「ぼくも!」 次いで次男も静かに意志を告げた。 「じゃあ、今朝は目玉焼きにしようか。今から急いで作るから、ママのお手伝いしてくれる良い子たちはどこかにいないかな?」 じわじわとまだ痛みが続く下腹を無視し、俺は超有名な教育番組の歌のお兄さんばりに双子たちへ振舞った。

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