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第67話

「はい! はーい! はーい!! あお、おてつだいする!」 「はい! 僕も!」 朝から二人は充電満タンと言った様子で、お手伝い要員へ全力で名乗り出る。 「二人ともありがとう」 俺がそう言うと、二人も嬉しそうに微笑む。 「じゃあ、パパはお仕事でお疲れだと思うから起こさないように、静かに手を洗ってきてください!」 号令をかけると、二人はそれぞれの口の前でしっと人差し指を立てながらサニタリールームへ小走りで消えて行った。 可愛らしい足音を立てていることは、さすがに気が付かないらしい。 微笑ましい様子に苦笑しつつも、ベッドルームで眠る翔琉の耳には届かないと良いなと祈りながら、俺はキッチンへ移動した。 その時である。 突如、強い痛みが訪れて立っていられなくなってしまう。 シンクの縁にしがみつき、ふぅと大きく息を吐いて痛みを逃す。 予定日は確かに今日だ。 だが、まだ陣痛らしい陣痛は来ていない。 産まれるのはもう少し先だろう。 何とか、今夜寝静まった二人に用意してあったクリスマスプレゼントを俺から枕元に置くことができるなあ、など痛みの中で考える。 そう考えられる内はまだ陣痛ではないだろう。安易に考えていた俺のところへ、二人が「て、きれいにあらった!」と両手をかざしながら戻って来る。 「じゃあ、二人はお皿の準備をしてくださーい」 俺が指示を出すと、二人ははしゃぎながらシンクの後ろにある食器棚からいつもの丸い平皿を一枚ずつ背伸びして取り出す。 その後ろで俺は、また下腹部へ訪れた激しい嵐に苦痛で顔を歪める。 「……っう……」 双子たちは幸い俺の異変に気が付いていないようだ。 取り敢えず、翔琉が起きてくるまでに家のことを済ませて、それから念の為に病院へ行く準備をしておこうと考える。 翔琉が起きてきたのはそれから三時間後のことだった。 「……颯斗?」 俺の顔を見るなり、寝惚け眼が怪訝そうな表情を浮かべ近付いて来る。 冷や汗をかきながら苦笑する俺に、翔琉は一目で事の重大さに気が付いたようだ。 子どもたちに隠れるようにして朝ご飯の片付けをしていたが、痛みにより全く進んでいなかったそれに、翔琉は俺の陣痛が始まったことを察知する。 下腹部の痛む間隔は規則的で、その頃には二十分から十五分おきとなっていた。 「病院に電話したか?」 「いえ、まだです」 翔琉が起きてきたことに大きく安堵し、俺はその腕の中へ身を預ける。 「じゃあ、俺が電話する」 俺の携帯電話に登録してある病院の番号を押すと、代わりに状況を説明したくれた。 あれよあれよという間に、俺は予定通りクリスマスイブ入院となり、診察台へ上がった時には子宮口ももうだいぶ開いていたようだ。 またもや俺は、本陣痛に繋がるまでそれに気が付かず出産を迎えてしまったらしい。 うっかりにも程があるだろうと、自身を呪う。

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