7 / 15
彼女いますか?
「春海 くんは花のこととか詳しいの?」
花咲月 さんはテキパキと花の入ったバケツの水換えをしつつ、未だに緊張している俺を気遣ってかそう訊ねてきてくれて俺と視線が合わさる度に花咲月 さんは屈託なくニコリと微笑んでくれた。
もう本当にこの人なんなの?
本当に俺と同じ人間なの?
神じゃないの?
え?
神だよね?
あ、やっぱり神だわ・・・。
「それが・・・全然詳しくなくって・・・」
俺はそう言って本当に苦い笑みを満面に滲ませた。
「花の名前とその種類とが一致するのはチューリップとバラくらいで・・・。これ・・・本当に・・・」
笑われるかな?
そんなんで花屋に就職とか馬鹿かって・・・。
いや、馬鹿だけれども・・・。
「問題ないよ」
「え?」
花咲月 さんのその言葉に俺はキョトンとさせられ、瞬いた。
「知らないのならこれから知ればいい。何も問題じゃないよ」
そう言って淡く笑んだ目の前の完璧なイケメンに俺は完全ノックアウトさせられてしまった。
こんなの・・・惚れてしまう!!
俺はそっち系じゃないけれども、もうそっち系に移行してもいいって思うくらいに花咲月 さんはイケメンだよ!
「わからないことがあれば何でも聞いて。答えられることには答えるから」
「じゃあ・・・彼女いますか?」
「・・・え?」
・・・え?
・・・・・。
し、しまったぁー!!
何、仕事に関係ない完全プライベートなことを聞いてんだよ!!
馬鹿か!!
俺は!!
いや、馬鹿だけれども!!
ああ・・・顔が熱い・・・。
本当に顔から火が出そうだ・・・。
てか、もうお家に帰りたい・・・。
リアルガチで・・・。
「残念なことに彼女はいないよ」
「・・・え?」
花咲月 さんのその言葉に俺はまたキョトンとさせられ瞬いた。
「合コンとかよく誘われて行くんだけど・・・なかなか・・・ね?」
そう言って花咲月 さんは苦く微笑んだ。
え?
・・・は?
・・・え?
は?
合・・・コン?
・・・・・合コン!?
花咲月 さんが・・・合コン!?
何!?
この人、合コンに嫌がらせにでも行ってんの!?
花咲月 さんなんかが合コンに参戦したら女の子を総なめにされて男が男とくっつくハメになるわ!
いや、待てよ?
花咲月 さんほどのイケメンだ。
花咲月 さんのお友だちも超絶美麗のイケメンと言う可能性もあり・・・か?
それなら納得いくが・・ ・。
「やっぱりこんな顔じゃモテないよな。春海 くんはモテるでしょ? イケメンだし、いい子だし」
そんなことをサラリと言って微笑んだ花咲月 さんに俺は『ん?』とさせられた。
・・・え?
俺・・・今、花咲月 さんに喧嘩・・・売られてる?
花咲月 さん・・・俺に喧嘩・・・売ってるのかな?
・・・・・いやいや~。
まさかそんなこと花咲月 さんに限ってないよね~・・・。
・・・・・ないよね!?
「・・・花咲月 さん・・・それ・・・凄い嫌味ですよ。わかってて言ってるなら・・・」
俺はやんわりとそう言って堪らず苦笑した。
それに対して花咲月 さんは合点がいかないのかキョトンとしていた。
「お~い。花咲月 ~。ちょっと来てくれないかぁ~?」
そう店先から気だるげに声を張ったのはイケメン店長 笠井 さんだった。
それに対して花咲月 さんは『はい』と気持ちのいい返事を返し、俺にニコリと微笑んだ。
「春海 くん。ごめん。ちょっと一人で水換えしててくれる?」
「え? あ・・・は、はいっ! もちろん! 頑張ります!」
俺はそう答え、花咲月 さんに負けじと微笑んだ。
が、しかし俺のその渾身の微笑みは花咲月 さんの極上スマイルで呆気なく散り去った。
「ごめんね。行ってきます」
花咲月 さんは瀕死のダメージを食らいポカンとしている俺の頭を優しくポンポンとするとその場からスタスタと離れて行ってしまった。
花咲月 さんの破壊力・・・とりあえずヤベぇ・・・。
花咲月 さんはチート過ぎる・・・。
俺はその場で悶絶していた。
そして、そんな俺の頭をスパーン! と叩く手があった。
俺はそれに驚いて『うおふっ!?』と変な声を漏らし、後ろを振り返った。
ともだちにシェアしよう!