9 / 15
気まずい
「・・・春海 くん」
「は、はいっ!!」
花咲月 さんからの唐突な声掛けに俺は堪らず上ずった声を発してしまった。
ただいま俺と花咲月 さんは二人で配達中・・・。
つまりは走行中の車内(密室)に二人っきりの状態なわけで・・・兎に角、気まずい。
こんな気まずい状況を引き起こした元凶は細マッチョ系爽やかイケメンの武田 剛志 さんでそこに追い討ちを掛けたのはイケメン店長の笠井 徹 さんだった。
『あ。お前ら二人で配達 行って来いよ!』
それが見送りの言葉だった・・・。
「春海 くん・・・今、気まずい?」
そう言った花咲月 さんは無表情で前だけを見て車を運転していた。
俺の事故の告白の後から花咲月 さんは笑っていない・・・。
あんなににこやかだった花咲月 さんが今は無表情だ。
もう胃が痛いを通り越して気持ちが悪い・・・。
大体、花咲月 さんも花咲月 さんだ。
なぜ、こんな瀕死な俺に追い討ちを掛ける?
花咲月 さんは一体、何なの?
てか、みんな俺のこと嫌いなの?
コレ、いじめなの?
もう・・・本当に泣いていいですか?
「・・・春海 くん、ちょっと車・・・止めるね?」
花咲月 さんはそう言うと俺の返事は聞かずに海水浴場の駐車場に車を入れ、そのまま停車した。
停車した車内は更に気まずかった。
俺はその気まずさに堪らず俯いた。
「ちょっと歩こうか?」
「え?」
俺がそう声を発するよりも先に花咲月 さんは車からさっさと降りて海へと続く階段へと向かいだしていた。
俺はそれに慌ててシートベルトを外し、海へと向かう花咲月 さんの背中を追った。
花咲月 さんは波打ち際近くまで行くと『ん~・・・』と声を漏らし、大きく伸びをしたのだけれど、その『ん~・・・』と言う漏れ声のイケボがエロいことエロいこと・・・。
俺は伸びをしている花咲月 さんを後ろからそっと見つめていた。
(花咲月 さん・・・完璧な八頭身だ・・・。しかもその八頭身・・・足がガッツリ長いタイプで本当にカッコいい。こりゃ男でも惚れるわ・・・)
「春海 くんは俺のこと好きなの?」
・・・・・。
まさかのド直球ですか・・・。
俺はそのあまりにもド直球過ぎる花咲月 さんの玉 にポカンとさせられてしまった。
もう何て言って打ち返したらいいのかわからない。
だから俺は口が動くままに従った。
「す、すみませんっ! アレにはちょっと誤解があって!」
俺はそう言って花咲月 さんの前に駆けて行き、深く頭を下げた。
本当に誤解だ。
俺はそんな変な意味で花咲月 さんを好きなんじゃない。
そのことをちゃんと花咲月 さんに説明しないと・・・。
下げた頭の中でそうテンパりまくっていると花咲月 さんがクスリと笑った。
俺はそれに促されるかのように下げたばかりの頭をゆるゆると押し上げた。
頭を押し上げ終えると同時に俺の身体はフワリと何かに包み込まれた。
俺の身体を包み込んだそれに俺は目ん玉をひん剥いた。
え?
・・・え?
・・・・・えぇ!?
ともだちにシェアしよう!