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ナギ「父ちゃん?」

名前を持って登場しているのに、最後まで会話のシーンがないままに終わった人物が一人だけおります。〝クロキ〟です。 省吾に言わせますと、〝裏と呼ばれる街にある豪奢な小劇場〟の〝この町の名士が名を連ねる老舗クラブの経営者〟となります。〝最近では誰もが楽しめる気安い店を主力にしている〟けれども、〝クロキ自身は昔気質(むかしかたぎ)の頑固さで、老舗と呼ばれる店が組織の(かなめ)と思っている〟と続きます。そして〝サキに任される劇場こそが、クロキの名前を継ぐのに相応しい店〟なのだそうです。 いやはや、怪しげな人物ですが、本編では、クロキが自身の言葉で語る場面はありませんでした。それが息子のナギには理解出来ないようです。 クロキ「……」 ナギ「父ちゃん、なんで黙ってんだよぉ、坊ちゃんがそんなこと、許さないよぉ。俺の坊ちゃんは父ちゃんの坊ちゃん、だろ?だからぁ、坊ちゃんの俺でぇ、坊ちゃんの父ちゃん、なんだよぉ……って、あれぇ?俺の父ちゃん、坊ちゃんの父ちゃん……だった?」 ロウ「ナギ、おい……それ、おかし……」 サキ「黙ってろ、ロウ、ナギにはナギの考えがある、だよな?ナギ?」 ナギ「うんと、うんと、えーっと、俺の父ちゃんが坊ちゃんの父ちゃん、だからぁ、俺と坊ちゃんはぁ……」 サキ「うん?おまえと省吾は?」 ナギ「兄弟!」 サキ「よかったな、ナギ。従兄弟として嬉しいぞ。おまえだから到達する結論に乾杯だ」 ナギ「わーい、坊ちゃんと兄弟、坊ちゃんと兄弟!坊ちゃん!坊ちゃん!」 クロキ「……」 三人の側で、ロウが頭を抱えたのは言うまでもない。

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