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アオ「うううっ、うううっ」

またまた、とある休日のこと―――。 藤野家の女主人が朝早くからバタバタと慌ただしげに出掛けて行った。気紛れな友人ばかりだ。その日の朝になって突然、朝食会をするという急な連絡が回って来ることもある。 寝室では、女主人もさすがに夫を気遣った。妻の真理がそっと静かに外出の準備をしていた頃、夫の藤野はまだベッドの中でぐっすりと眠りこけていた。目覚めてすぐ、妻が隣にいないのを不審に思ったが、オオノから話を聞かされ、いつもながらご苦労なことだと言って笑った。 そのオオノも所用があると出掛けて行った。真理の外出を、他の家族に伝えるよう約束させられたが、省吾も誠司も、予定がない限り、休日は昼近くにならないと起きて来ない。伝え忘れたところで、どうということはないと、藤野は安穏とした気分で思っていた。のちに、オオノが言った家族の意味を狭義に捉えたことを深く反省するが、この時には気付けなかった。 普段、休日の朝は真理と二人で朝食を取る。今朝は藤野一人で席に着いた。アオの相手も真理に任せているが、今朝は藤野が一人ですることになった。 アオ「うううっ、うううっ」 藤野「アオ、唸るのはあとにして、朝食の用意をしてくれないか」 アオ「うううっ、うううっ」 藤野「真理がいないのだから、私にはわからないのだよ。共鳴しようが、おまえからは唸り声しか感じないしな、同じことだ。話せない訳でもないのだし、きちんと話してくれたのなら、幾らでも答えてやるぞ」 アオ「うううううううううっ」 藤野「いい加減にしないかっ」 アオ「ううううううううううううううううううううっ」 藤野「私は腹が減って気が立っているんだぞ!怒らせたいのか!」 アオ「ううううううううううううううううううううううううううううううううううっ」 藤野「わかった、わかったから喚くんじゃない。一時間もすれば、真理も友人との朝食会から帰って来るだろう?おまえが何を言いたいにせよ、彼女が戻ったら必ず聞いてもらうようにする。それまで我慢してくれないか?」 アオ「うううっ、うううっ、うううっ」 藤野「よくわからないが……わかったということか?」 アオ「うっ」 アオが頷くように小さく唸った。そのまま素直にキッチンに戻って行った。藤野はこれで食事にあり付けると喜んだが、待てど暮らせど運ばれて来ない。アオが何を思って唸り出したのかを理解した時は、既に手遅れだった。結局、真理が戻るまでの小一時間、藤野は空きっ腹を抱えたまま、食堂のテーブルに一人取り残される羽目になった。

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