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第4話 犬、王子と出逢う(2)
それから数週間後、伊緒は編集委員に意見を聞かせてくれと言われ、例の犬みたいな男──斑目の書いた作品を、初めて読む機会が訪れた。
(お世辞にも上手いとは言えないな……)
正直な感想を求められれば、入部資格があるとは思えなかった。
が、伊緒はその作品をべた褒めした。
仮にスパイを目論んでいるのなら、返り討ちにしてやろうと決意したし、もしもあの件に全く関わりがないのなら、ほぼ初対面なのに冷たくしてしまったことへの、罪滅ぼしのつもりだった。
かくして、春休み明けに、斑目は入部資格を手にし、「新創作研究会」へ入ってきた。
斑目の書いた作品が、影で密かに侮蔑を込めて、「ラノベ」と呼称されていることも知らずに。
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