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第36話 犬、王子を暴く(1)(*)

 斑目の家に入ると、玄関のすぐ横の壁に真っ赤な首輪とリードが飾ってあった。 「お前、これは捨てるか隠すかしろよ。誰かがきたら、絶対引かれるだろ」  若干引き気味に意見すると、斑目は生真面目な顔で答えた。 「誰もこないですよ。それに、これ付けてした時、思い出しちゃって捨てられないんです」  伊緒の後ろから入ってきた斑目は、壁との間に伊緒を挟んで手をついた。ビクリと驚いた伊緒には触れず、首輪とリードを手にすると、躊躇いなく伊緒に渡し、跪く。 「付けてください。今日は特別な日なので」  膝を折った斑目は、眦を紅く染め上げ、欲情した顔をしていた。 「あなたの犬でいたい。駄目ですか……?」 「いい、けど」  声が上ずって、斑目の手から渡された首輪とリードを受け取りながら、伊緒もまたそれとなく上気した頬をしていた。 「夏に、すごく興奮してたじゃないですか。俺にリード付けて散歩しながら。俺も初めて付けられて、異様に興奮したの、覚えてます」  斑目と最初に寝る前に、試しに首輪を付けた遊びをした。あの時、斑目が興奮していたのだと悟り、伊緒はテンションがふわっと上がった。 「付けて。お願い」  斑目と目が合った瞬間、伊緒は腹の中がぎゅっと熱を持つのを感じた。大型犬は、お座りしたまま伊緒に繋がれるのを待っている。斑目の首に真紅のベルトを巻き、同じ色のリードを持ち、少し引いてみると、従順に斑目が顔を上げた。それを見た途端、伊緒の中にあるはずの理性が、欲情に押しやられた。 「……触りたい。あなたに触っても、いいですか?」 「んっ……」  リードを引くと、壁に寄りかかっている伊緒の腰を、斑目が両手でそっと掴んだ。そのまま背中に腕を回し、脊柱のくぼみを撫でられる。腰を長い腕で二重に抱き寄せられ、臍のすぐ下に顔を埋められ、深呼吸される。尻の丸みをぎゅっと掴まれると、それだけで伊緒は緊張し、声を漏らした。 「ぁ、っ……」  伊緒のスラックス越しの下半身が、布地を押し上げ、硬くなるのを意識する。斑目はスラックスの布越しにある伊緒の後蕾を探り当てると、ぐっ、ぐっ、と指でなぞり、押した。それだけで膝が立たなくなりそうで、伊緒はリードを持ったまま、斑目の肩に両手で縋りつく。 「夏日、っ……」 「こうしてあなたに繋がれてると思うと、すごく興奮します」  斑目は、情欲を孕んだ視線で伊緒を射ながら、静かに恐るおそる「もっと?」と尋ねた。 「んっ、さわ、触っ……て、いい、から……っ」 「嫌だと思ったら、リード引いてください。なるべく止まるよう、努力だけはします」 「だけって」 「だって、あなたが好きだから」  言いながら、伊緒のジャケットを脱がし、ベルトを緩め、スラックスの前を乱すと、下着を噛んで引っ張って押し下げる。伊緒の若木のような屹立が露わになると、斑目は躊躇いもせず、舌でそれを嬲った。

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