38 / 43

第38話 犬、王子を暴く(3)(*)

「どう、しますか……?」  伊緒の腰を跨いだ斑目に問われ、体位のことを言われているのだと気づいた。伊緒は斑目の背中に腕を回すと、「上に乗るのは、嫌だ……」と囁いた。 「わかりました。このまま?」  頷くと、犬であるはずの斑目は、横たえた伊緒を組み敷いて、深く口付けてきた。 「先輩」 「?」  至近距離から、囁くように言われる。 「きれいです。宝石みたいだ。こうしてあなたを愛せるなんて、幸せです」 「夏、日……?」  切なげな表情で、伊緒の頬に向かって斑目が手を伸べる。 「あなたを、食わせてください、希先輩」 *  首筋を鼻先で撫でられただけで震えがきて、声が出た。  覆い被さっている斑目の下腹から生えている勃起の先端に、伊緒の芽吹きが接着し、ぶつかる。そのまま腰を振られて、斑目の手が左右に色づいている胸の突起にそっと触れる。しばらく様子を伺いつつ、指の腹で先端を擦り、やがて頭が下りてきてそこを口に含まれると、はしたない声が上がってしまった。 「乳首、大好きですよね?」 「ちが……っ」  伊緒は反応する身体を制御できず、恥ずかしさから思わず首を振った。しかし、斑目にぢゅうっ、と音を立てて吸われ、もう片方を捏ねられ、その合間に言われると、斑目の言葉の方が真実な気がしてきてしまう。 「大好きになってください。今から」 「ぁ、ふ……っ、な、んで……っ」  伊緒が恥ずかしがるのをいいことに、斑目はたくさんいやらしいことを強いてくる。 「俺が、好きなので、希先輩も、好きになってくれたら嬉しい」 「っ……」  そんな言い方をされると拒むこともできず、伊緒はいつしか身体をくねらせながら、斑目の愛撫に甘んじた。あちこちを触られ、舐められても、気持ち悪いとは一度も思わない。どころか、悦楽に似た甘さが全身に広がり、斑目を受け入れることにむしろ悦びを感じていた。 「先輩、ここ、好き?」 「ぁ、ぅ、す、好き……っ、好き……!」 「本当に? どれぐらい?」 「ん、すき、っごく、好き……っだから、ぁ……!」  次第に身体の強張りが解け、無防備なさまを斑目に晒してしまう。好きと言うまで斑目が止めないので、伊緒はシーツを蹴りながら、言葉にするようになっていった。 「俺も、あなたが大好きです。誰よりも、たぶん」 「たぶん、かよ……っ」  感極まって、告げた言葉に、斑目が返してくれる。誰かに愛を囁いた分、返されるのが初めてで、伊緒はじわりと視界が潤むのを感じた。 「だって、初めてだから」  斑目は、眩しそうに伊緒を見下ろした。 「全部、あなたが初めてだから」

ともだちにシェアしよう!