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第40話 犬、王子を暴く(5)(*)

「ん、んんっ、んー……っ」 「凄い、指に、吸い付いてくる……っ。先輩、ここ、好き……?」  好きだと言うかわりに、何度も頷く。斑目の目を見ながら、乱れ崩れていく自分を、伊緒はもう止められなくなっていた。はしたない、あさましい姿も全部、斑目に見せてしまった。何度も伊緒に好きか嫌いかを訊いてくるのは、おそらく伊緒の過去を知っているせいだろう。駄目だったら途中で止めるつもりでいる斑目に、いつしか伊緒は全部任せられる、と思うようになっていた。 「ぁぅ、す、きぃ……っ、好き……っ! ゃぁ、あっぁっ!」 「中、凄い動いてて、乳首も勃ってます、けど……っ」 「ん、っ、欲し、ほしい……っ、もう……っ」  ついに白旗を上げた伊緒が、腰をくねらせねだると、やっと斑目は納得したようだった。伊緒の中から指を抜き、代わりに臨戦態勢の斑目を押し当てる。柔らかく押され、刺激されていた箇所が疼いて、身体の芯から熔けてしまいそうだった。 「夏、日……っ」  伊緒はその時になって、急に自分の気持ちを告白していなかったことに気づいた。 「好き……っ」 「希、先輩……?」 「好きだ、夏日。だから、俺の、中に、挿入って……っ」  舌足らずになりながらも言うと、斑目は一瞬、もの凄く凶悪な顔をした。そのまま息を数瞬整えると、噛み締めた歯の間から、呻くようにして言葉を発した。 「困ったな」 「?」 「嫌じゃ、ないですか? 俺、もう止まれなそうなんですが」 「ゃ、じゃ、ない……」 「リード、ちゃんと持っててくださいね。あと、蹴飛ばしていいですから」  何重にも安全策を講じてくれる斑目の気遣いが嬉しかった。 「……嫌じゃない。もっと欲しい。夏日が、好き、だ」  伊緒はそうして目を閉じると、今夜初めて、自分から斑目の頭を引き寄せ、くちづけた。 「俺を──して」 「っそういう、ことを……っ」 「いい、から」  素直に言うと、髪を梳かれて、切なげな表情の斑目と視線がぶつかる。 「俺も好き。大好きです。希先輩。だから大事に、抱きます。なるべく」  晴れた視界に映る、まっすぐな眸。  斑目に壊されるなら、全部投げ出して好きにされたい。伊緒が囁くと、眉をぎゅっと寄せた斑目は、呻いた。 「──入りますよ」 「んっ」  ずずっ、と無理矢理押し開くようにして、その場所がこじ開けられる。次の瞬間、奥のあの場所を狙いすましたかのように、熱杭で一気に貫かれ、伊緒は声を上げた。 「ぁあぁぁっ……!」  だが、衝動の赴くままでなく、ある程度制御してくれたせいだろう、それほどのダメージはなく、むしろ悦楽が全身を覆った。

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