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西野清貴サイド 地球が消滅する5日前
今日も篠崎のアパートから少し離れた場所のゲート式のコインパーキングに愛車を入れると昨日の女が駆け寄ってきた。
ストーカーか?
そういえば大学の時には団体でいたな。
ああ、うっとおしい。
昨日のみっともない俺の姿を見ても幻滅とか失望とかしないのがすごいな。
「あのっ、今日も行かれるんですか?」
余計なお世話だ。
無言で睨みつけても女はひるまない。
俺の後ろに着いてパーキングに入ってきた赤い○ルシェのドアが開いき、身なりの良い女性が降りてこっちに向かってくる。歳は30歳前後といったところだろう。
「ねぇ、私の別荘まで貴方の車で送っていただけないかしら?」
なんで車があるお前を送らなくちゃいけないんだ。
「ご自分の車でどうぞ。俺はこれから用があるので」
「まっ!」
今まで断られたことがなかったらしく、凄い形相だが気にしない。
女達を置いてさっさと篠崎のアパートに向かう。
「あっ、待ってっ」
今日もついてくるのかと振り向くと○ルシェもついてきた。
篠崎のアパートに連れて行くと○ルシェの顔は昨日の女と同じ様にアゴが外れるほど驚いている。
そんなにこのアパートは酷い所なのか?
「ここに用があるの?」
ポルシェは声を震わせている。
昨日の女は得意げにニヤリと笑って言った。
「インターフォン、私が押しましょうか?」
同じ女が押しても出てきてくれるわけ無いだろう。
「そうですね。今日は○ルシェの方、押してもらえますか?」
指名された○ルシェはニッコリと笑って昨日の女にワザとぶつかってから、インターフォンを押した。
女の争いはいつ見ても醜いな。
少し間があってから無言で篠崎がドアを開けた。
俺はドアの隙間に身体を滑り込ませ、三度目の土下座をした。
「篠崎、何でも言うことを聞く、一生のお願いだっ!!」
昨日の女はほぼ同時に俺の横に座り、遅れて○ルシェも俺の傍にしゃがみ込んだ。
この女達はなんでみっともない俺に幻滅しないんだろう。
「………絶っっっっっ対に嫌だ。」
篠崎が思いっきり低く冷たい声で拒絶する。
これは凄く怒っている声だぞ。
俺が冗談とか冷やかしで告白していると思われているなら、篠崎の誤解をとかないと情に絆されてくれる前に本当に嫌われてしまう!
「地球が消滅するなんてことなかったら、こんな事一生言うつもり無かった。どうせ死んでしまうなら消滅する前に…」
「うるさいっ!!全員帰れっ!!」
篠崎の声に俺の言葉は遮られた。
今日も俺がドアに挟まれないように家から押し出してからドアを締める。
俺の身体を押し出す篠崎の手に優しさを感じた。
大丈夫。
まだ俺は嫌われていない。
篠崎、明日また来るよ。
地球が消滅するまで、あと4日
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