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雨の日だけ一緒に帰るということ以外、正也と満は何の繋がりも持たなかった。晴れの日や曇りの日には学校内ですら一度も顔を合わせたことがない。 ただ、何度も一緒に帰った日々は、奇妙ながら二人に確かな絆を生んでいた。 正也と満はお互いに、相手の騒がしすぎない性質を好いていた。 下駄箱に寄りかかり、黙って正也を待っているだけの満は、図々しいのか控えめなのか分からなかった。ただ、正也は一度も彼を無視したことはないし、疎ましく思ったこともない。 雨の日の二人は、良き友だった。 帰り道に語らった日々の出来事、悩み、笑い話。満と共に積み重ねていった言葉は、時に正也の心を癒すことさえあった。 満は時折、こんな風に愚痴ってみせた。 「近所に住んでる二コ上の女がさ、やたら昔から俺に構うんだ」 「好かれてるんじゃないのか」 「……多分」 満の時折漏らす愚痴は、女性関連のものが多かった。 満は整った顔をしかめながら言った。 「俺が小五の時なんてさ、そいつ、『ねえ、満くん。キスってしたことある?』って言って、俺に迫ってきたんだ。あの時は、子供ながらに気持ち悪いって思ったな」 「それは…大丈夫だったのか?」 「うん。急いで逃げたから」 女性問題は正也には無縁な話だったので、当人には悪いが聞いている分には楽しかった。満も満で、正也に愚痴ることでうまい具合にストレスを発散できているようだった。

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