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第3話

 「起きたか」  俺が台所に向かうと男は歌うのを止めて俺に向かって微笑む。  悪魔みたいな微笑みだ。   何故かエプロンまで着用している。  いや、何故かじゃない。  こないだ俺が親友の内藤に言ったからだ。  「女の子のエプロン姿っていいよねぇ」と。   もちろんその場にこの男はいなかった。  だが、その日からエプロンを着用している。  コイツが俺の言動をどうやってだかモニターしてんのはバレバレなのだ。  GPSは外せと言ったし、コイツは嘘をつかないので、何か別の方法で俺の言動をモニターしているのだ。    で、俺は見たくもないムキムキの半身タトゥーの男のエプロン姿を毎日見ることになったのだ。  まあ、フリルのついたではなく、普通のエプロンだけど、だけど。  マフィアの休日みたいな趣もないわけではないけど。  違うんだ。    こういうんじゃないんだ。  男は料理はからきしなので、エプロンはしていても料理はしない。  その「見せ」エプロン姿を無視しながら俺は朝飯を作るのである。  男は米炊くだけだ。  そして、料理する俺を見てるだけ。  まあ、慣れないながらも家事は頑張ってやってくれてはいる。  掃除で家を壊すことも、洗濯で服を破くこともなくなった。  買い物に行ったり、どうやってだが、近所のじいちゃんばあちゃん達とも仲良くなり、すっかり俺の家に居着いてしまった。  そして、ずっと家で俺を待ってる。  朝出かけてから帰って来るまで、ずっと待ってる。  帰ってきたら側にひっついて離れない。  俺の飼ってた犬と同じ生活だ。  それが、それだけが、この男の生活だ。      「オレの金はお前のものだ、何が欲しい、いくらいる」  と聞いてこられたけど、怖かったから受け取るのを拒否してる。  この男の金なんて何やって稼いだものかわからねーよ!!  買ってくる食料やらは受け取ってるけど。  後、誘拐された女の子の事件で壊してしまった愛車と同じ自転車を男が持って帰ってきた時は・・・つい貰ってしまった。  だって俺の趣味はロングライド、自転車で遠くに行くことなんだよ!!  男もなんかわかってて、俺が断るような高級自転車ではなく、前のとおなじやつだったから、受け取ってしまった。  礼を言ったら、よろこんでよろこんで、その夜俺を責めるのがしつこかった。  もう、ドロドロになるまでイカされた。  「可愛い可愛い可愛い」って。  泣かれたからいいかげんにしろっていえなかった。   俺が誉めたら喜んではしゃぎすぎる犬を思い出して。    気絶してからも穴を弄られ舐められ性器をしゃぶられていたんだと思う。  アイツを喜ばせすぎてはいけないと思った。  恐ろしいことは。  恐ろしいことは。  この男には何の望みもないのだ。  俺の側にいること以外には何も。    俺の身体を確かに貪るし、挿入以外の全部はされてる気がするが、この男は俺がのぞまない限り挿入しないだろう。  身体はそこまでの問題ではないのだ。  この男は俺に所有されて、俺の側にいることがもう人生の目的になってしまっているのだ。  俺に何かを強制することもない。  俺を待つだけの男。    重い。     重すぎるんだよ!!  と思いながら、男に朝食を作ってやる。    男は運んだり、ご飯を装ったりするのを楽しそうに手伝う。  で、二人で遅めの朝食をくう。  食い終わったら、片付けや皿洗いを男がする。  俺はテレビの前で寝転んでる。  そして、男が俺の隣りによりそってくる。  わかってるんだ。  わかってるんだ。    俺の背後から抱きめてくる。  俺が拒否したら止めるようにそっとそっと指で腹を撫でられていく。  そして、俺の拒否がないのがわかるとその指が動きだす。  シャツをめくりあげて。  乳首を優しく撫でていく。  優しく撫でられるその指に吐息がもれる。    コイツは明日の夜までご近所のじいちゃんばあちゃんを追い払ったのだ。  俺が大学もバイトも休みな三日間にあわせて。  それは。  それは。  そういうことだろ。  昨日の時点だ俺もそれがわかかっていて、そして、期待してしまってた。  この男がくれる三日間の快楽。  それってそれって、どれだけ気持ちいいんだ?  俺は。  俺は。  正直にいう。  この男がくれる快楽にはすっかりハマってた。  だって気持ちいいんだ!!!  いいんだよ!!!    乳首を優しく撫でられて喘ぐ。  優しい優しい指遣いに気持ちいいんだけど、これじゃない。  今日欲しいのは。  「今日はいいから・・・跡つけていいから・・・」  俺はねだった。    男が喉の奥でうなった。  笑ってるのだ。  喜んでるのだ。    この男は俺の身体に後をつけるのが大好きなのだ。  所有の印をつけるのが。    唸り声を上げて、乳首に吸いつかれた。  甘い痛みに声をあげた。    全身を噛まれて吸われて泣かされるんだ。    甘く咬まれて吸われる。  尖って腫れてしまうまで、その乳首を味わわれる。   気持ちいい  気持ちいい、  俺は叫ぶ。  ああ、声ころさないでいいのはいいな。    なめて、吸って、噛んで・・・    強請る。  強請ったら与えられるから。     「してやる。してやる。してやる、何でもしてやる」  男が吠える。  強くかまれて、なめられたなら、射精してしまう。    「お前のモノだお前のモノだ、俺は!!」  射精した性器をしゃぶられた。  その後舌が熱くて気持ちいい。  俺は男を欲しがる。  男がくれる快楽を欲しがる。  男が甘やかしてくれるのほしがる。  いっぱいして。  いっぱいしてくれ  俺はすすり泣く。    「してやるしてやるしてやる」  男は泣いてる。  俺にしてやることがあるのが嬉しいのだ。   コイツが俺に出来ることって少ないからな。  迷惑のがはるかに多いんだ。     でも今は。   「たくさん気持ち良くして・・・」  俺は囁いた。  男がそれに応えてる。  飯と排泄と風呂と睡眠以外、俺はこの男に鳴かされるのだ。  それは。   俺の。   そして男の望みだった。                           

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