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第4話
犬が吠える。
ああ、俺達で立ち向かわないといけないんだな。
相棒。
俺達で。
やり遂げるんだ。
犬のオレンジの目が光る。
この世で一番信じられる相棒が俺より先に覚悟を決めた。
ああ、相棒。
やるしかねーか。
俺達しかいねーんだもんな。
俺は覚悟を決めた。
戦うか死ぬか。
なにより、俺が戦わないと、友達が助からない。
だから俺は。
俺は戦う。
お前となら戦い抜ける。
犬が俺を見つめた。
俺だけを信じ、俺だけをまもろうとするその意志。
「行くぞ、相棒!!」
俺は犬に、俺の誰よりも信じる相棒に声をかけた。
犬も吠えて俺の声に答えた。
行ける、お前とだったら。
俺は走り出したのだった。
そんな、昔の夢を見た。
「朝だ。遅刻するぞ」
男に起こされた。
起こすように言ってたっけ。
うおっ。
腰が、身体の節々が痛い。
三日間。
挿入以外はなんでもしたのだ。
気持ちよかった
本当に気持ちよかった。
――
さすがに昨夜はばあちゃん達が帰ってくる夜までには疲れ果てて寝てた。
こんなに快楽に狂ったことはなかった・・・。
おかげで、心がすがすがしい。
清らかに生きたい。
そう思えるほどに。
今なら出家できる。
俺はもう最後の方はおかしくなってて、アイツにぶち込まれても拒否しなかったと思う。
いや、むしろ喜んだと思う。
でも、アイツはそうしなかった。
あの男は、そら、もう、いやらしいことの限りをつくしたけど、でも、わけわかんなくなってる俺にぶち込むような真似はしなかった。
「お前が本当にそうして欲しいって言うまではしねぇ」
穴に舌までいれて差し込むくせに、へそとか、乳首とか、足の指なんかでイカせるのが好きな変態のくせに。
そこだけはあの男は。
ちょっとキュンとしてしまうくらい、誠実だった。
いや、キュンとかしてねーし。
大体こんな爛れた関係も想定外だし。
俺を抱き起こして、じっと俺を見てる。
「起こしてくれたありがとうよ、助かった」
俺がそう言ってもじっと見てくる。
朝犬が俺を起こしに来た時の目と同じだ。
「散歩だよな、散歩」と連れていってくれると信じてる目だ。
「散歩」って俺が言ってくれると疑いなく信じてるあの目だ。
ああ、クソっ、
この信じきったオレンジの目に俺は勝てないのだ。
ちゅっ
キスしてやった。
軽く。
寝ぼけて覚えたてのキスを朝してしまって以来、男は目だけで毎朝キスを要求してくるのだ。
にかぁ
悪魔のような笑顔が広がる。
目が炎のように燃え上がり、殺人鬼が人を殺した時のような満足げな笑顔だ。
「可愛いな、可愛いな、ほんと可愛いな」
そればかり言う。
コイツ。
語彙力マジない。
「朝飯つくるからのけ」
俺は言った。
男はそっと俺を抱えていた自分の膝から下ろす。
「お前の好きな玉子焼きも作ってやるから待ってろ」
俺が言ったら、男が見えない尻尾を振った。
この男は俺が作るものは何でも好きだが、特に、俺の玉子焼きが大好きなのだ。
みえない尻尾をバンバン振ってるのがわかる。
で、俺は欠伸しながら起き上がり、見た夢のことなんか忘れてた。
あれは。
子供の頃の。
もう終わった話だ。
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