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第5話

 内藤を見つける。    走っていく。  内藤は穏やかで優しい俺の親友だ。  高校の時からつるんでて、大学も同じ学校を目指した。  俺の自転車友達でもある。    俺達は巨石や巨木とよぱれるモノのマニアで、そういうものを一日200キロ位の距離を自転車で走って見に行き帰るのが好きなのだ。    「でかいな」  「でかいね」  そう言ってでかい樹や石を眺めるのが。  そうだ。  俺達は妙なマニアだよ。  でも調べて見ろ、ちゃんと確立されてるジャンルだからな!!  サイトや本まで出てるんたぜ。  高校で内藤が自転車乗りで、しかもそのマニアであることを知ったとき、コイツしか親友はいないと思った。  ロングライドはコイツといくのが最高だ。  まあ、石と木どちらが素晴らしいのかについての、ガチな話になると大人しい内藤でさえ荒ぶるので、そこは互いに触れないことも友情のためには必要だ。  「内藤、弁当!!」  俺は内藤に弁当を渡す。  大学で会う日は弁当を作ってやってる。   お互い貧乏学生だし、俺は食費だけはあの男が買ってくる食料があるし。  何より、食堂の息子である俺は、料理上手なのだ。  食事は大事だぞ。  基本だぞ。  「いつもありがとう。助かる」  内藤は嬉しそう。  内藤は俺の作る料理が好きなのだ。  まあ、喜ばれると俺も嬉しい。  男にも同じ弁当を多目につくって置いてきてるのは内緒だ。  妙な男に住み着かれてるのも内緒だし、夜な夜な喘がされてんのはもっと内緒だ。  あのヤバい男と内藤の接点はなければない方がいい。  内藤に嫉妬の炎を燃やすあの男について、内藤は知らない方がいい。  内藤には、犬を飼い始めた、とだけ言ってる。  野良犬に懐かれて、飼ってると。    「前と同じだね」  内藤はそう言って羨ましそうな顔をした。  内藤は犬が好きたが、酷い犬アレルギーなのだ。  おかげで、内藤が俺の家に来ることはない。  俺が内藤の家にいくけど。    でも家の犬、いや男がうるさいので、もう内藤の家には泊まれない。    「犬が待ってるから帰る」  と言わざるを得ない。  内藤には何もするな、と言ってので大丈夫だとは思うが、内藤の家から帰ってこない俺を待って、オレンジ色の目を嫉妬に光らせながら部屋の中を歩きまわっているあの男を見るのはなかなかキツイものがあるのだ。  あの男は絶対に俺がすることを止めないが、嫉妬はとにかくとにかくする。  しまくる。  とことんする。  嫉妬させると、しつこいくらいイカせにきたり、べったりくっついて離れなかったりするので。  本当に面倒くさいのだ。  だから、内藤や他の友だちと遊んでも、実家にいた時よりもちゃんと家に帰ってきてた。  あ、でも。  コレ、犬が生きていた時と同じだな。  俺は、俺の世話しか受け入れない犬のために、絶対に帰ってたし、朝散歩に連れていってたから。  俺が高校の時に死んだ犬。  俺の。   俺の相棒。  俺はアイツを本当に。    愛してたんだ。  ちょっと切なくなる。  だって今でも愛しいから。  「来週ロングライド行ける?」  不意に思いだしてしんみりしていた俺に内藤が言った。  「行く行く!!」  俺は即答する。  二人で大学のベンチで弁当を食べながら計画を立てた。  ああ、楽しみだ。  楽しみだ。  その時だった。  「  」  誰かが俺を呼んだ。        

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