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第6話
誰だかさっぱりわからなかった。
大学の噴水前のベンチで男二人で自分でつくった手作り弁当喰ってる、残念ながらあまりイケてはいない俺達に声をかけてくるのは、絶対こういう男じゃなかった。
「久しぶりだな」
ソイツはキラキラと笑った。
いや、マジ、キラキラしてた。
派手な格好してるわけじゃない。
むしろ、地味というか上品な服装なんだけど。
なんか、もう、雰囲気が、華やかで。
ソイツは当たり前に周りに人をあつめる人間特有の雰囲気がしていた。
内藤が怯えて俺の影に隠れる。
内藤は地味ながらよく見りゃ美形でひっそりとモテるタイプだが、人見知りだし、引っ込み思案なので、女の子達もこっそり見ているタイプだ。
沢山の人間の前にだしては死んでしまう程内気なので、明らかに人を集めるこういうタイプを最も苦手としている。
だけど、同時にこういうタイプの女子に一番モテる。
内藤に近いて迫ってくるのもこのタイプだ。
そして、こわがって逃げ回るので彼女ができない。
俺と同じで童貞だ。
そう、あんなにやらしい三日間とか過ごしてるけど、俺は童貞なんだよ。
・・・・・まだ一応処女だし。
後ろだけでイケるけど・・・。
まあ、いい。
内藤は怯え、俺も焦る。
俺は商売している家の子なので、内藤みたいに怯えたりはしないが、コイツと自分の場違い感はわかる。
俺は下町の兄ちゃんで、コイツは、なんか、そう。
アップタウンのお坊ちゃんだ。
ピアノとか習ってそうな。
「え、悪い、誰?わからないんだけど」
俺は率直に言う。
こんな知り合いはいない。
ただ人に話しかけてるだけで人目を集めてしまうようなやつは友だちにも、知り合いにもいない。
地元のツレなら、通り過ぎる人達が出来るだけ目をあわそうとしないようなのなら何人もいるけど。
人目を集める、と人目をそらされるのでは全然違う。
それでも、ツレ達はあの男よりは上品だけどね。
俺の基準は顔にタトゥーをいれてたら真人間じゃないなので、あの男は最初からアウトなのです。
なんだってば!!
なんでか一緒に暮らしてるけど!!
とにかく、親しげに呼び捨てにされるような知り合いにこんなヤツはいなかった。
「悪い、ホントわわかんない、誰?」
俺はそこは率直に聞いた。
ソイツはそれを気を悪くしたようにはみえなかった。
にっこりと笑う。
きらめきが増して、内藤がさらに怯えた。
そんなに怖がらなくても、と思うが、内藤は本当にこういうタイプが苦手なのだ
「小学校の時同じクラスだった、フワ!!フワだよ!!」
キラキラしながらソイツは言った。
その名前は忘れてない。
フワ。
フワフワの略。
天パのフワ。
あのフワ?
大人しくて、泣いてばかりいたフワ????
「フワ!!マジか、フワ!!!」
俺は喜んだ。
ずっとフワのことは心配してたんだ。
泣いてないか。
いじめられたりしてないか。
心配して。
心配して。
俺はフワに抱きついた。
あの小さくて、痩せてたフワは俺よりも大きくて、スポーツでもしてるのかしっかりした身体になってた。
でも、小さなフワを俺は抱きしめた。
あの頃の。
守ってやらなきゃと思ったあのフワを。
「良かった!!良かった!!元気だったんたな!!」
俺はフワを抱きしめるってか、抱きついてた。
フワの身体は昔そうした時のように一瞬怯えたように固まり、でも、次の瞬間あの時のように俺にしがみついてきた。
「会いたかった、会いたかった」
その声は震えていて、もうキラキラしてなかった。
フワだ。
天パの髪をオシャレにセットして、きらきらしていて、背が高くなっても。
これはフワだ。
俺は嬉しかった。
「俺もあいたかっわた!!」
俺は言った。
フワが泣いた。
俺を抱きしめ、声をあげて泣いた。
キラキラしたイケメンを公衆の面前で泣かせることの意味を俺はわかっていなかったと思う
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