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第7話

 子供達が泣き声を上げていた。  校門のあたりで。  俺はそこに向かう途中だった。  小学生だった俺は頭をかかえた。  もう薄々事態がわかってたからだ。  そしてはしる。   これ以上子供達が泣かないように。  校門にいたのは、怒りにみちた褐色の犬だった。  誰もが野良犬だと思っただろう。    手入れされた毛並みや、場違いに可愛い首輪なんかではこの犬の本質は隠しきれない。  オレンジ色の目は敵意と悪意に燃え上がり、低い唸り声を響かせていた。  誰も。  校門から外に出れない。  犬が陣取っているからだ。  誰もここから出さないかのように。  低学年の子は泣いていた。  そら、怖い。   怖いよね。  俺はすまなくおもった。  「犬!!」  俺は犬に怒鳴った。    きゅーん  犬が見かけとは違う可愛い声をあげた。  だらんと下がっていた耳が立ち、しっぽがブンブン振られている。  「迎えに来るなって言っただろ!!」  俺は犬をしかる。  犬は俺の周りをぐるぐるまわる。  目が回らないかと思うほどだ。  先生達が走ってきたので、必死であやまる。  何回もこんなことがあったので、また俺が怒られるけど、コイツ、首輪抜けの達人だし、ドアや窓も上手に開けるんだよ・・・。    でも外見こそヤバいが、コイツは絶対に人を噛まないのて、ギリギリ助かっている。  でなきゃ、とっくに保健所におくられてるよ・・・。  また父さんが泣かせた子達の親に謝りに行かないといけないかもしれないけど、この繁華街のど真ん中にある学校は、両親が商売している子が殆どなので、まあ、なんやかんやと警察までふくめて顔見知りなので、許してもらえるはず。  「ダメだろ。ちゃんと待ってろって言っただろ。警察とかに捕まったらお前、保健所送りにされんだぞ」  俺は怒るが、犬にしてみれは、俺が自分を置いて勝手にこんなとこに出かけるのが悪いということらしい。 不満そうに唸られた。    「頼むよ。お前が連れて行かれたら俺、耐えられないんだ。お前がいない毎日なんて耐えられない」  今、あの男が聞いたなら、嫉妬で犬を吊しかねない言葉を俺は犬に囁き、犬は当然のようにそれを受け入れた。  吠える。     「わかってくれる?」  俺は聞く。  犬は少し考えて、渋々吠えた。  「助かるよ。出来るだけ早く帰るから。学校以外はずっと一緒にいるから」  俺は言った。  その通りで。  俺は当時、どこに遊びに行くのも犬と一緒だったし、犬と一緒じゃない場所にはいかなかった。  友達連中も、自分たちには懐かないけと、決して噛んだりはしない犬にしまいには慣れて、連れて行っても気にしなくなった。  サッカーしてる時も。  ゲームしてる時も。  犬と一緒。    家に帰ってもずっと一緒。  それが俺の小学生時代だった。  ケガしている犬を拾ってから、「犬」が俺といると決めたのだ。  俺が選んだんじゃない。  犬が俺をえらんだんだ。  でも俺は犬が大好きだった。  犬は俺を愛してくれた。  ただ一人俺だけを。    幸せだった、そんな頃の話だ    

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