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第9話
家に帰ると男はとんでもなく不機嫌だった。
何でか匂いをかがれた。
「誰を抱きしめた?いや、誰に抱きしめられた?・・・この匂いは内藤じゃねぇな」
男は唸った。
え、怖い。
匂いでわかんの?
お前ホントに人間?
「久しぶりに友達にあったから、ちょっとハグしただけだよ!!それに俺はいつも通りちゃんと学校行ってバイトして帰ってきただけだし。ちゃんと連絡しただろ?」
俺はため息をつく。
学校終わった。
バイトに行く。
今から帰る。
全部男に携帯からいちいちメッセージを送って教えてるのだ。
嫉妬深い彼女にそうする気の弱い彼氏みたいになってるのだ。
「気に入らねぇ匂いだ」
男は俺を抱きしめて離さない。
「晩飯つくるんだから・・・離せ・・・」
そう言う唇を塞がれる。
ねっとりとキスされた。
味わわれるように。
されてしまうと力が抜ける。
コイツ。
ホントに上手いんだ。
て言ってもキスだって、大人以外他の誰も知らないけど、だってキスされて立ってられなくなるなんて・・・おかしいだろ。
手にしてたカバンが落ちた。
玄関先で押し倒され、舐められる。
首筋、耳。
舌の熱さ。
体温の熱さ。
服の上から身体をこすりつけられる。
ゴリゴリと股間も当てられた。
欲しくなってしまう。
硬いそれを性器におしつけられて擦られる。
はんっ
声が出てしまうのを押し殺す。
いや、壁薄いから。
「オレがいいぞ。・・・オレか一番いい、オレにしとけ」
男が囁いてくる。
俺の性器を弄りながら。
もうズボンは下ろされていた。
デカイ指がいやらしく動き、耳を噛まれて囁かれる。
低く深いバリトンボイス。
「オレが一番上手いし、オレが一番何でもお前のためにしてやる、お前が欲しけりゃ、何でも手に入れてやる」
その必死な声が、その手以上に俺を感じさせる。
俺が欲しくて欲しくてたまらない声が。
その声に溺れる。
「こんな風に舐めれるのも、オレだけだ。他なんか試さなくていい・・・オレが、オレが一番上手い・・・」
男は俺のを咥えてしゃぶりはじめた。
いやらしい音をたてて。
気持ち良すぎて、痙攣しながら射精した。
それを飲まれる。
音をたてて。
「気持ちいいだろ?な?、オレにしとけ、オレだけでいい」
男は残った精を吸い出すようにしながら言う。
オレンジ色の目が燃えて、人によっては殺されるんじゃないかと思う顔なんだけど。
男は絶対に「他のヤツとするな」とはいわないのだ。
絶対に俺に強制したりしないのだ。
ただ必死に自分にしておけ、しておけ、そう言うだけで。
言う。
言うから。
「お前としかしてないよ、外でしてこないよ」
そう言うしかないじゃないか。
そう言ったら、めったにない子供みたいな顔て笑うんだから。
そんな顔で笑ったら美形だったんだな、って思う顔で笑うから。
仕方ないじゃないか。
「オレが。オレが、オレが一番いい」
そう言って俺を強く抱きしめてくるんだから。
俺はため息をついて、男の髪を撫でる。
そして、男の耳に囁く。
「口でしてやるから・・・いい子にしてろ」
俺の言葉に男は死ぬほど喜ぶわけで。
それがわかってるから言ってしまって、してしまうわけで。
玄関先で男のものを咥えてるとなんか夢中になっちゃってて。
「フワなんかに・・・フワなんかに・・・渡せねぇ」
男が優しく俺の髪を撫でながら呻いた言葉に深く気にしてなかった。
そう。
なんで。
フワの名前まで知ってるわけ?
俺、名前言ったっけ?
男のモノが熱く爆ぜたから、そんなことは忘れてしまったのだった。
俺はちゃんと飲んでやったんだよ。
ああ、もう!!
俺はその後、口をゆすいで、晩飯を作り男と食べて、課題をし、男に風呂で身体を洗われイカされて。
俺もイカせてやって。
男に抱きしめられて寝たのだ。
これが当たり前になってる日常が若干怖い。
まあ、でも、まだ。
何も始まってなかった。
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