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第11話
結論から言えば。
なんだかよくわかならなかった。
俺には不似合いな場所だった。
デカイ外国の映画みたいな家で、外国の映画みたいなパーティーで。
こんなパーティーが現実にあるんだな、と。
なんか、キラキラした人ばかりで。
安っぽい、入学したときに買ってもらったスーツを着た俺達は明らかに場違いかと思ったけど、俺たちみたいなのは結構いて、そこは安心した。
自信に溢れた人達が楽しそうに俺たちみたいな学生にとりかこまれ、どうすれば成功するのかというような話をしていた。
社長さんや、起業のコンサル、そしてフワみたいに学生で成功した人達。
キラキラした人達は、スーツなんか着てなくて、カジュアルな格好だったけど、そのTシャツ一枚でもとんでもない金額なのはわかった。
俺のブァストファッションの店で買ったのとは訳が違う。
なんか、クラクラした。
でも三種類の人達がここにいるのがわかった。
キラキラした人達。
そして俺たち学生。
そして、会場のスタッフなのか、料理の皿をはこんだり、ドリンクをついだり、片付けたりして、テキパキうごいている人達。
でも。
テキパキ働いている人達はスタッフにしてはキラキラした人達に親しげに語りかけたりしてるから・・・違うっぽい。
俺は首を傾げた。
「あの人達はこの会場のスタッフさん?」
俺はフワに聞いた。
「彼らは有志のボランティア、ボク達の手伝いをしながら起業するために必要なことを学んでるんだ」
フワは言った。
ボランティア?
学ぶ?
このパーティー会場の手伝いで何が学べるんだろう。
皿を下げたり洗ったり、ドリンクや料理をだしたりすることから何を?
でも、スタッフさんたちは楽しそうだったから何か学べてるんだろうと思った。
フワは俺に気をつかってくれて、できるだけ俺のそばにいてくれてるのがわかったし、なんか色々社長さんに紹介もしてくれた。
聞いたことのある企業の社長さんもいてビビった。
「就職、困ったら言って。ボクは君のためならどこでも紹介する」
フワは言ってくれた。
言ってくれたんだけど。
俺はもう無理って思った。
下町の食堂の息子には、こんな場所はしんどい。
俺、何?
成功、成功って言われてもわからないし。
なんか違うし。
何が違うのかわからなかったけど、違うのはわかった。
帰りたくなった。
立派になったフワが見れただけで十分だ。
いつの間にか消えていた内藤が戻ってきて、呆然としていた。
ネクタイが外され、シャツのボタンもいくつか外されていた。
内藤は欲しい物を手に入れることを躊躇しない猛禽系の女性にモテる。
むしろ、そこ限定でモテる。
この会場にはそんな女性がキラキラしながら沢山いた。
どうやら襲われかけたらしい。
物陰に連れ込まれて。
「帰ろうよ、帰ろう・・・」
内藤は涙目だ。
内藤が好きになるのは内気な女の子で、でも内藤は大概その女の子より内気なので、内藤の恋は実ることがない。
内藤を追いかけてくる猛禽みたいな女の子を内藤は心の底から怖がる。
だから、内藤も俺とは違う理由で当分童貞だろう。
可哀想に。
俺は同情した。
でも、そろそろ帰らないと。
男に帰ると言った時間に近付いてきてる。
「フワに断ってくる。待ってろ」
俺は内藤に言って、フワを探しにいった。
フワはプールなんかがある庭にいた。
ここ、本当に日本?
プールサイドのテーブルで、誰かと話をしてた
声をかけようとする前に、酷く冷たい声がした。
「好きにすれば?」
フワは冷たく言った。
相手はスタッフ(ボランティア?)の女の子で泣いているようだった。
「別に誰も君を縛ってない、好きにしたらいいんだよ」
フワは言って、冷たく目をそらした。
見えない壁が女の子とフワの間に出来たのがわかった。
え、これ、別れ話?
「なんとかします、なんとかしますからぁ・・・見捨てないでぇ・・・お金はすぐに持ってきます・・・」
女の子は泣いた。
え?
何?
「ボクのお金じゃない。君のお金だし、ボクのためのお金じゃない君のためのお金だ」
フワの声は先程の冷たさはなく優しかった。
フワは女の子の手を優しく握った。
「・・・どうしても困ったら相談にのるよ・・・ね?」
フワの言葉に女の子は泣きながら頷く。
何かザワリとした。
わかんないけど。
何かが良くない。
ふとフワは顔をあげ、俺に気付いた。
そして笑った。
キラキラしたあの笑顔じゃなくて。
恥ずかしそうな、あの小さなフワの笑顔で。
だから。
俺は。
気付くのに遅れたんだ。
その笑顔は昔のフワのままだったから。
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