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第14話
「可愛い、可愛い・・・」
男はうっとりつぶやきながら俺の髪を撫でている。
また風呂に入れられて、風呂の中でもヤらしいことをされて、俺も男のを咥えたりして、まあ、散々気持ち良くなって、二人で寝てる。
デカい男に背後から抱きしめられて眠ることにすっかり慣れてしまった。
包み込まれるようにして眠るのは、正直、悪くない。
男はせっかく買ってやった布団を使おうともしない。
俺の布団に潜り込んできて、俺を抱きしめて寝るのだ。
時々寝てないこともある。
寝てる俺を一晩中見つめているのだ。
かなり怖い。
だが、誰かと一緒に眠ったことがなかった、どんなに身体を重ねても自分の隣りに誰かを寝かせたことがなかったというこの男には、こうやってねることの方がセックスよりも意味があるらしい。
「大体セックスも基本、二人きりとかではしないからな。女と二人きりじゃ用心にはならねぇ」
男は前にポロリと言った。
「ちゃんと見張らせながらするんだよ。抱いてる女が何仕込んでんのかわかんねぇからな。腹に爆弾でも仕込まれてたら、誰かをつかって盾にしなきゃならなくなるしな」
はあ?
と思った。
セックスしている時も誰かに見張らせていなければならないって、女性の腹に爆弾仕込むって、それどんだけお前狙われてんの???
お前・・・、何?
聞いてドン引きしたんだった。
「大丈夫だ。全部始末してきたから。もう、誰も俺を追って来ねぇ・・・お前のとこにくるために・・・俺はがんばったんだ」
甘く囁かれた。
何をどう始末したのかは聞きたくなかった。
男と出会って、半年位男は姿を消していて、その間に男は「男の抱き方」を「俺のために」学んだり、と「俺といられるために」色々「始末」してきたらしい。
詳しくは聞きたくないし、聞いても教えてくれないだろう。
「知ったらお前が危なくなる」から。
「可愛い、お前は本当に、可愛い」
そう囁く男の言葉に納得したわけじゃない。
俺は自分で言ったら切ないが、平凡な、良く言っても感じの良い顔ってくらいもんで、こんな男がうっとりと「可愛い」というような顔じゃない。
でも。
誰かを抱きしめて寝ることも、安心して眠ることも出来なかった男が、嬉しそうにそうしてるのは。
良かったな。
そう思ってしまうんだ。
俺はずっと犬と寝てたから。
いつもは俺の足元で。
俺が呼んだら俺の腕の中で。
何かの体温や、心臓の音の安心感は知ってたから。
「・・・何でもしてやる・・・」
男が呟く。
いや。
お前に何かしてもらうのは怖いよ。
そう冷静におもった。
眠りに落ちていく。
でも。
ふと、気になった。
あのパーティーで起こったこと。
あのパーティーは何なんだ?
本当は何なんだ?
フワは何なんだ?
あの泣いていた女の子や、内藤を襲ってフワに切り捨てられた女は何なんだ?
考えようとして。
でも。
寝てしまったのだった。
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