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第19話

 フワと仲良くなったのはランドセルを上級生から俺が取り返してからだった。  フワは次の日、だまって俺に宿題のプリントを渡してきた。  俺はいつも通り、宿題なんかしてなかった。      また怒られりゃいいかな、と思っていたのだ。  だから、フワが差し出すプリントを怪訝そうに見た。  「休み時間にうつしたら」   フワは言った。  写したよ。  そりゃ、また親が呼び出しされるのは避けたかったし。  何より、「借り」は返すというフワの男気を感じとったからだ。  してもらいっぱなしにはなりたくない、対等でいたいというフワの気持ちは良くわかった。  それから俺が遊ぶのには犬だけじゃなくフワも加わった。    元々フワは嫌われていたわけじゃない、一部の上級生にイジメられてはいたけど、ちょっと取っつきにくかっただけで、すぐに俺達、下町の悪ガキに馴染んだ。  フワだって下町の悪ガキだったんだし。  俺の友達連中の何人かと一緒に俺の家の食堂で飯を食って帰ったりもした  繁華街の真ん中の小学生。  親はここで働く人達で。  夕食を一人で食べる子供や、夕食とは呼べない夕食を食べる子供達もいたわけで。    フワの母親は千円札一枚を置いていくだけだった。  俺の両親は、そんな俺の友人達に夕食を食べていけとすすめてた。  俺達兄妹と一緒に食べろと。  店の片隅で、俺達子供は騒ぎながら飯を食べた。  一緒に夕食を食べられないことは俺の親達も同じで。  仕事してたし。  だからこそ、子供達をみんな一緒にたべさせたかったんだと思う。  誰も寂しい夕食にならないように。  だから、俺達は、寂しい夕食ではなかった。  みんなで騒ぎながら食べたから。  俺達は友達で家族みたいなもんだった。    なので俺の友達連中は今でも俺の親には頭が上がらない。    フワが加わってからは、食堂の隅で子供達が宿題をするのも加わった。    フワはわからないところをみんなに教えてくれたんだ。    「なんで、宿題なんかぁ」  俺達はブーたれながらでも、お店のお客さん達に教えられる時よりも素直に従った。  フワの教え方はわかりやすかった。  そして、犬はずっと俺の側にいた。  そんな毎日だった。  俺達は楽しかった。  下町の悪ガキで。  たまにオヤジにガチでどつかれながら。  イタズラ、悪ふざけ、度胸試し。  笑って、笑って。  楽しかったんだ。  それは、真実だった。  でも、俺には見えちゃいなかったんだ。        

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