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第25話
俺達は派手な音をたてて水の中に落ちた。
池があったんだ。
池の柔らかい泥のせいか、俺も犬もケガはしなかった。
俺のまわりに立派な鯉が泳いでた。
泥だらけになって立ち上がった俺が見たものは。
池が見える縁側から中が見える和室、
そして、
大人のおっさん達に服を脱がされ、小さな尻をわしずかみにされ犯され、口にもつっこまれているフワだった。
もう一人はフワの身体を撫で回していた。
おっさん達はぽかんと俺を見ていた。
3人いた。
そして、縁側で素知らぬ顔をして何かを飲んでいるフワの母親もいた。
母親は丸い目で俺達を見た。
驚いて。
そしてフワも、その時は母親に良く似た丸い眼をして俺を見ていた。
子供らしい顔で。
犯されながら。
フワの顔は後ろに撫でつけられ、その綺麗な顔を変態達が楽しめるように露わにされていた。
フワ。
だからか。
だからお前は自分の綺麗な顔が嫌いだったのか。
コイツらがそれを楽しむから。
俺は怒った。
犬に怒鳴った
「やっつけるぞ!!」
俺は背負ってたリュックからそれを取り出した。
子供が冒険に出るんだ。
武器がないといけない。
子供でも扱える武器って何だ?
そんなの決まっている。
靴下に石を詰めたものだ。
遠心力で子供が使っても十分パワーが出る。
元不良の常連さん達が教えてくれた。
多勢に無勢とか、そういう時のためにだぞって。
これを使うなら、今しかないだろ!!
こいつら、俺の友達を犯してやがる!!
下町の悪ガキなのでセックスについての知識も、悪い大人が子供を狙うことも知っていた。
だから絶対にゆるせなかった。
泥まみれの犬と子供が庭から飛び込んでくるのは想定外だったのだろう。
人払いした屋敷で、誰にも邪魔されず、綺麗な庭を眺めながら子供を犯すのがコイツらの楽しみだったのだ。
秘密のために余計な人間はいなくて、俺の突撃は止められることはなかった。
俺はまだフワに突っ込んだままのオッサンの横っ面に遠心力をつけた石が詰まった靴下を思い切りたたきつけた。
ぶひっ
豚みたいなオッサンはそのまま倒れて、頭を打ち、起き上がらない。
もう一人のオッサンに俺は襲いかかった。
フワに咥えさせていたソイツチンポの睾丸めがけて、靴下をたたきつけた。
オッサンは絶叫した。
ぶちっと音はした。
ちゃんと壊せたかだけが今でも気がかりだ。
こんなもん、ぶっ壊れちまえ!!
それは本気の願いだったから。
でも、うすら笑いを浮かべながら、フワの身体をなでましていた三人目はそうはいかなかった。
「クソガキ!!」
さすがに子供を犯せる男だ。
子供の俺に向かってフルスイングでパンチを振るってきた。
でも、だ。
俺は怖くなかった。
訂正することがある。
犬は人を絶対に噛まない。
そう言ったよな。
たった一つ例外がある。
俺に攻撃をしたものは別だ。
黒い塊が飛んでくる。
オレンジ色の目を光らせて。
泥だらけの犬だった。
犬は男の喉元に噛みついた。
ダイレクトに息の根をとめにきた。
さすがに手加減無しだ。
悲鳴をあげて泣き叫んだのは男だった。
犬が男をかじるのをしばらくそのままにしておいた。
あの男も俺を殺そうとしたんだから、いいだろう。
フワを男達から引き離した。
泥だらけのシャツを脱いできせた。
フワが見られたくないだろうと思ったからだ。
「許してくれ!!許してくれ!!」
男が泣き叫ぶから、犬を止めた。
えらく血は出てるが、死なないだろ、うん。
犬は。
さすがに近所で有名な「地獄の犬」らしく、男達を大人しくさせる効果があった。
ケガして血を沢山流し、猛犬に恫喝されたら大人でも大人しくなる。
男達を犬をつかって威嚇しながら、フワを抱きしめフワの母親を睨みつけた。
「あんた自分の子に何を!!!」
俺はぽかんとしたままの母親に怒鳴った。
母親は俺の怒鳴り声でやっと正気に戻ったみたいだった。
「何が悪いの?この子も納得してやってるの。身体でお金を稼いで何がどうして悪いの?私にこの子が出来たのは、私が身体で稼いでいた時なのに。この子が生まれたやり方で、この子が稼いで何が悪いの?」
母親は本気で言っていた。
何の罪も感じてなかった。
「私だってこの子の年には、モデルしながら色んな人にされてたのよ?、父さんに言われるまま。何が悪いの?」
母親も。
そうされてきたのだと。
「フワが嫌だって言ったなら、全部ダメなんだよ!!!」
俺は怒鳴った。
それが全てだった。
フワは普通の子供だった。
俺達と同じ。
構われなくても、それでも普通の子供だった。
母親は。
フワからそんな子供である時間を奪って、フワの心を蝕んだのだ。
母親しか頼るものがいない、
そしてそんな母親を愛している、
そんな子供が、「意志」でしてるわけがないだろう!!!
そんなことは子供にだってわかった。
子供だからわかった。
フワが無理やり色んなものを剥ぎ取られてかきたのもわかった。
母親にも犬をけしかけた。
ケガをさせる必要はなかった。
母親は犬が近づいただけで大人しくなった。
俺はその部屋にあった電話から警察に電話した。
犬は、男達とフワの母親達を完全に支配下においた。
その燃えるようなオレンジの目と唸り声だけで。
オレは。
警察が来るまでフワを抱きしめていた。
フワは何も言わないで、すすり泣き、俺にしがみついていた。
フワは。
たった一人で、戦い続けていたのだ。
耐えて。
耐え抜いて。
何も言わなかった。
ただ抱きしめていた。
犬はたまに気に入らない様子で、唸ったけれど、俺がフワを抱きしめるのを許した。
犬だってわかってた。
俺が抱きしめているのは。
耐え抜いて生き残った、勇者なんだと。
だから、特別にゆるした。
妹を抱きしめていても怒る犬が。
フワは小さくて。
暖かだった。
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