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第28話

 しばらくは何もなかった。  俺は週末は内藤とロングライドを楽しんでたし、週末以外の夜は男に喘がされまくっていた。  自転車に乗るから、ディルドの使用は週末前は禁止したけれど、着実にディルドはデカくなってきている。    「ゆっくり挿れられるのがいいか?」    そう低い声で囁かれ、かなりデカめのディルドを沈められる。  その深さが甘くて、男の指を噛んでこらえた。  「それとも抜かれるのが好きか?」   響く声に耳を犯されながら引き抜かれる。  ゆっくり引き抜かれ、襞を裏返しにされるのに痺れて、思わず出た声を唇で塞がれるのは、涎が出るくらい良かった。    許して、もうイカせて、と泣くまで、ゆっくり教え込まれてしまった。  そこに挿れられる良さを。  ヤバい。  ヤバい。   ケツはヤバい。  俺はもう、普通のセックス出来る気がしない・・・。  何より、普通のセックスしたことがないってのが悲しい。  俺、もう基本は後ろでイくからね。  大体、コイツがどこでディルドなんかを仕入れてくるのか分からない。  俺がいない時、コイツが何してるのかはわからない。  大抵家にいるらしいのはわかってるし、近所のスーパーでもすっかり名物になってるらしいんだが。  そして、やけに近所の婆ちゃんじいちゃん達には人気者者になってた。  今まで俺に頼んでた、蜂の巣の駆除、  デカい不燃ゴミをゴミ捨て場所に運ぶ、  何か分からないことを、コンピューターで調べて欲しい、  町内の掃除、  等を男に頼んでるらしい。  あの男がゴミ拾いや、ドブ攫いをしてるとは・・・、でも、してるんだよなぁ・・・。  なんか誘われなくなったと思ったら男が代わりにしていることを最近知った。    「俺が行くから!!」  と焦ったら  「今度は一緒だな」    とデートの約束みたいに喜ばれてしまった。  そう。  そう・・。デートねぇ。  とにかく、孫へのプレゼント相談、  これは止めておけ、とは思う。  子供向けの玩具なんかコイツが知るわけがないのに、と。  まあ、男の案は不採用になったらしい。  当然だ。  殺傷力のあるスリングショットなんか子供にもたせたらいけないだろ、と思うのだが。  スリングショットは、Y字になった器具に強力なゴムのベルトを張り、それを伸ばして縮む力でパチンコ玉みたいなのを撃ち出す、武器、もしくは競技道具だ。  だめだろ。    でも、日本では昔パチンコと言って子供の玩具として、木の枝などをつかって作られていたらしい。  「オレも子供の頃はパチンコで鳥を撃ってたねぇ」  とじいちゃんは乗り気でマジで贈ろうとして、息子達に怒られたらしい。    「訓練すれば、子供でも敵を倒せる」  って言ってたのを冗談だとじいちゃんは思ってるけど、あの男の場合本気だからな!!    今は鳥でもダメだし、(じいちゃんは鳥を撃って持って帰っておやつにしてたらしい)当然、人なんか絶対駄目だからな!!  なんやかんやでうまくやっているらしい。  頼りになる外国人さん、と好評なのである。  俺の友達だと思っているらしい。  いや、友達ではないんだ。  そういうのではない。    だけど、「外国人だから見た目は怖いけど良い人だね」でくくる婆ちゃんじいちゃん達が心配になってる。  あの男は良い人ではないし、外国に対する誤解がありすぎる。  外国でも、あんな顔にタトゥー入れてるやつは、カタギじゃないに決まってるだろ。    「何でも言え、なんとかしてやる」  男はそう言っているらしいが、本当に何でもされたならヤバい。  本当に何でもするからな、コイツ!!  「お前の周辺を味方にしておけば、お前の立場は安泰になる。基本だ」    と言ってるが、多分それ、俺の知ってる人付き合いの基本とは違うと思う。  安泰の意味も違うと思う。  「ちゃんと裏切り者がいないかを調べるためにも、良く知っておくのは大切だ」  とか言ってるからな。  裏切り者って何?  その闇社会の生きるスキルみたいのを町内で発揮しないで欲しい・・。  だが、知らない間に男が長屋全体のネット環境を整えたり、各家の古くなった物干し台を直したりしてくれたのは、確かに長屋全体の為にはなったし、じいちゃんばあちゃん達に、「コンピューター」(スマホでも何でもそういう)を教えてくれたりしたのは、正直、感謝している。  その理由が。  俺の安泰のためだとしても。  フワとはメッセージのやりとりをしあうようになった。  そのメッセージの一つ一つを何故か男に確認させなけゃいけなかったけど。  フワはまだ話してはくれなかった。  俺は心配だった。  だから、つい。  するべきではない人間に話してしまった。  あの男にだ。          

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