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第29話

 「フワには関わるな。これはいつもの意味じゃねぇ。アイツは面倒くさい」  男は言った。  いつもの意味。  嫉妬ね。  「フワなんか気にしてねぇ。オレだけだからな、なんと言ってもオレだけだからな。お前の奥底までぶち込んでお前を喜ばせてやれるのはな・・・早く突っ込みてぇけど、そこはお前を待つ」  男は最近ご機嫌なのである。  着実に受け入れ準備が整っているからだ。  用意されている各種ディルドの最大を挿れられる日は近い。    「オレのはもっといいぞ」  そう言いながらディルドで犯されてると、イカされ続けてると、本当に男のが欲しくなってしまうのである。  中で動かされるものが、もっと熱くてドクドクしてたら、なんて、襞を擦られ喘ぎながら思ってしまうのだ。  ヤラレてみろよ、わかるから。  でも。   でも。    まだダメ。  踏ん切りはつかない。    でも、身体の準備だけは進んでいるのである。  男はすごい楽しみにしてて、どうやら準備が進んだ先に俺のOKがでると疑っていないのだ。  いや。    まだ、だめって言った。  そんなすぐの話じゃない。  でも、こんなに楽しみにされてたら。  いや、流されるな、流されすぎてこんなことになってるんだろうが。  ここは大きな決断だ。  これだけはキチンとだな・・・。  いや、違う。  そこじゃない。  「お前、何故フワがややこしいってわかるんだ。何か知ってるな?」  俺は男の鼻先に指を突きつけた。  俺達は食事中である。  男には小さいちゃぶ台を挟んで飯を食べている。  ちゃぶ台は、引っ越してすぐ、床で飯を喰ってるのにあきれた近所の婆ちゃんからもらったものだ。  バイトから帰った俺が料理をつくり(男は隣りでずっとみてる)、夕食を食べて、男が片付けて。  俺はその間、課題とかして。  男と一緒に風呂に入って(拒否するのをあきらめた)  そこから寝るまでエロいことをする、予定だ。  てか日課だ。  エロは外せない。  仕方ないだろ、若いんだ。  気持ちいいんだよ!!!  もう、認めるよ、クソっ!!!!  俺はこの男にエロいことされるのが、気に入ってしまったのだ。  だが。   だが、ごまかされたりはしない。  コイツ、フワについて何か知ってやがる。  そうだよな、お前、俺と出会った時にはもう俺の友人関係全員の名前まで知ってたからな。   すっかり忘れてたけど、コイツはかなりヤバいレベルのストーカーなのだ。    「知ってることを話せ!!フワについて調べたんだろ!!」  俺は男の鼻先を押す。  男の目に見えない犬の耳と尻尾が垂れ下がる。  怒られたみたいに。  見える表情がないけど、なんとなくそういうのはわかる。  俺にはなんでかこの男が表情豊か、てか見えない耳や尻尾が見えるのだ。  「そんなには調べてねぇ。だけど、奴がやってることに関わる連中から何となくは解ることがある」  男は認めた。  そんなには調べてねぇって、そんなにじゃなければどんなに調べるんだ。  どうやって調べてるんだ。  俺が知らない方がいいやつか。  「教えろ」  俺は言った。     フワを信じてる。    でも、フワは絶対に自分から助けを求めない。  なら、俺が助けないと。  今の俺は。  小さな子供じゃない。  男は考えこんでいる。  珍しい。  この男は悩まないのだ。  「ソイツはフワの望みなのか、だ。フワの安全、そのお前の望みを叶えるのは簡単だが、それがフワの望みになるとは思えない。フワの望みなんざ知ったこっちゃないが、フワの望みを潰した結果、お前が後で苦しむのは嫌だ」  男は唸りながら言った。  俺も理解した。  フワは何かをしてる。  おそらくたった一人で。  だが、俺が下手に関わると、フワがしている何かがダメになる可能性があるってことか。    「・・・・・・どうすりゃいいんだ」  俺は途方にくれた。  犬と一緒に反撃したあの日より、フワは難しいところにいるらしい。  「お前がフワに協力すればいい、フワがそうして欲しいと言わせさえすれば、少なくともフワがやりたい方向がわかればオレもそれに添えるだろう。オレのやり方は絶対にフワが望むやり方にはならないからな」  男は嫌そうに言った。  「フワに関わるなって言ったじゃねーか、お前」   俺は呆れる。  「言った。そう思ってる。でも、お前の望みがそれなら仕方ねぇ」  男は不機嫌だ。  だから本音だとわかった。  「なんとかなるのか?」  何なのかわからないけど。  「フワの望みによる」  男は答えた。  不機嫌だ。  「何なのかはフワに聞け、フワは言わないと思うが。でも、フワが何をしているのか、どうしたいのかを聞き出せないなら、お前はもう関わるべきじゃない」  男の言葉は正論だった。  俺は。  犬と飛び込み暴れる前に、フワから話を聞き出すべきだったのだ。  フワが顔を隠している理由をそれに気付いた時から聞くべきだったのだ。  サインは沢山あった。  助けを求められないフワが出していたサインが。  「ありがとう」  俺は男に礼を言った。  男は拗ねた犬みたいに顔を背けて、聞こえないふりをする。  だから言った。  「今日は噛んでも痕つけてもいいぞ」  食事中なのに男が立ち上がった。  この男は俺を噛んだり、身体に痕を残すのが大好きなのだ。  でも、俺はロングライド後に内藤と銭湯に行くのが好きなので痕つけるのを許してない。  でも、たまに許してる。  ご褒美に。  男が俺を抱えようとするので叱る。  「夕飯中だ、ちゃんと食え!!」  男は唸りながらも、坐って、味噌汁を一瞬で飲み欲し、大食の男のための大量のおかずも飲み、どんぶりによそった飯も飲んだ。  数秒だった。  だが、俺はまだだぞ。  俺は早く早くと目で訴える男のプレッシャーに負けそうになりながら、夕飯を食べるはめになった。  

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