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第30話

 「オレだけしていい」  オレの喉を噛みながら、男は嬉しそうだ。  シャツじゃ隠れないとこじゃねーかと思ったが、もう仕方ない。  こんなに喜ばれてしまったなら。  首筋を強く吸われて声が出そうになる  ダメ。  ダメ。  壁が薄い・・・。  「声出していいぞ、近所は空にした」  男が言った。  喉につけた歯形を嬉しそうに舐めながら。  「はぁ?」  正気に返る。  「まとめて、一番近場の温泉にぶち込んだ。もうバスは来ているはずだ、ちゃんとガイド代わりもつけておいたからな」  男はどこかに集団で監禁するかのような調子で言った。  珍しく、風呂に一緒に入らないと思ったら・・・そんなことを?  そんなことできるのか?  バスやガイドまで手配?  言われてみれば、婆ちゃん達がキャッキャッしてる声がする。  そして、誰かが誘導している声が。    この声知ってる。  とてもいい声だ。  とても危険な。    「まあ、さすがに本職は頼めなかったが、ドクターの奴は器用だから問題ないだろ。詐欺師にゃ出来ないことはねぇ」  男は笑った。  ドクター、詐欺師。  ピンと来た。  コイツの唯一の過去につながる存在。  本名は知らない。  だけど、俺が体調を崩したりしたら、男に無理やり連れて来られる男である。  無免許医師だ。  男は免許があるだけの医師(男の言い方によれば)を信用していない。  男が俺を診せるのはこのドクターだけなのだ。  おそらく、腕はいいのだと思う、男が連れてくる位だから。  そして、このドクター、多分詐欺師だ。  詐欺師だった俺の店の常連さんと同じ匂いがするから。  そして、今男が断言したからやはりそう。  本当に詐欺師なんだな。  無免許医は本当だと思う。  無免許医である嘘をつく理由がないし、この男を騙すと殺されるからだ。  男に怯える様子は本物で、その怯える様子に俺は本当にこの男について知らないのだと思う。  いつも無理やり男に連れ出されているが、どうせ悪人なので同情はしてない。  見た目はものすごくフレンドリーなチャラ男だ。  態度もチャラ男だ。  「詐欺師に婆ちゃん達の相手をさせるのか!!」  俺は慌てる。  何か面白いことをドクター、いや、詐欺師が言ったらしく、婆ちゃん達は黄色い声で若い娘さんみたいに笑ってる。  「アイツはオレを怒らせることはしねーよ」  男は低く笑った。  その笑い方が嫌なものだったから、そうなんだって納得してしまえた。  「詐欺をしない詐欺師程有能な奴はいねぇ、ちゃんとたのしませてくれる」  男は面白そうに言った。    そうなのか。  そうなんだろうな。  男はゆっくり、喉の歯形の痕を愛おしむように舐めはじめた。  痕の熱さに甘さが加わる。  ああっ  声を出してしまったが、婆ちゃん達ははしゃぎながらバスに乗ってるから聞こえてないだろう  男は目を細めて俺を見た。  「明日はどうせ、学校なんざ休むだろ?ゆっくり昼まで・・・しようぜ」  穴を撫でられながら、耳を噛まれながら言われて、吐息を漏らす。     したい・・・、  されたい・・、    「ヤらしいこと・・・たくさんしてくれ」  強請ってしまう。    男が唸る。  その声に興奮する。  俺を欲しがる獣に。    「たくさん噛んで・・・なめて・・・痕つけて・・・」  強請ってやれば、もっと欲しがられることを知っている。  肩を噛まれて声を上げた。  バスのエンジン音は遠ざかる。  だからいい。  今日はいい、我慢しなくていい。    「可愛いぜ・・・ホント可愛い」  男の声が甘い。      背中、尻、太股、股の付け根。  指まで。    噛まれて味わわれる。  噛まれる熱さ。  舐められる甘さ。  足の指を噛まれてながら、指の股を舐められ、射精した。  そんなところでも感じられること教えこまれた。  心のままに声を上げた。  「たまんねー、たまんねーな、ずっと鳴かせててぇ」  男は嬉しそうだった。  だろうな。  俺の声を聞くためだけに、近所を追い払うくらいだもんなお前。  でも大事な所を噛んで貰えなくて俺は泣く。     「乳首・・・乳首噛んでぇ・・」  泣いて頼む。  いつもは噛ませてないけど、でも、俺はここを噛まれるのが大好きなのに。  なんだそのドヤ顔。  男の顔にむかついた。  これを言わせたくて、そうしなかったのがわかって俺は怒る。  力無く男の顔を何度もグーで殴るが、男の笑顔は崩せない。  「怒るな。悪かった。今から、ここを可愛がってやるからな」  低く甘くその声で耳を犯され大人しくなる。  怒って泣いた涙を拭われ、目元にキスされ、甘い気持ちになる。  男は微笑んだ。  いつもの悪魔みたいな笑い顔じゃない、たまに見せる子供みたいな顔で。  そして、俺の胸へ顔をうずめた。  乳首に歯を立てられて、叫んだ。  股間に、思い切り来て。  噛みながら吸われて、身体を震わした。    もう勃起して濡れてるのがわかる。  ここを噛んで、吸われて、舐められるのだ。    沢山。     沢山。  いっぱいして  そう強請ってた。    乳首好きだから沢山噛んで、  そうすすり泣いた    男が震える。    耐えている。    「信じられねぇ・・・最高にエロい・・・たまんねぇ」  呻かれた。  でも、してくれた。  乳首を噛まれ、吸われて、舐められて。    俺はそこでイキまくったのだ。  噛ませるのはご褒美だけど。  俺にとってもご褒美なのは、隠す気はなかった。      

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