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第32話
夕方まで寝てた。
婆ちゃん達が嬉しそうな声あげて帰って来るのが聞こえるまで。
男は俺が寝てたってか気絶している間に、コンドームを使わなかったせいで汚れまくったシーツや部屋を綺麗に洗濯や掃除したんだろう。
全部綺麗になってた。
まあ、俺の身体も綺麗にされてはいたけど。
昨日俺が寝た時には、俺はドロドロで、体中跡だらけで、エロいというよりはエグいことになってた。
鏡見るのが怖い。
コイツは本当に痕をつけるのがだいすきなのだ。
寝返りを打つと、男が布団の隣りで、畳に横になって俺を見ていた。
じっと。
コイツは俺を見ているだけでも楽しいらしく、俺が寝てから目がさめるまで見ている時もあるようだ。
夜中に目をさましたら、コイツが座って俺の寝顔を見下ろしていたとか、よくある。
良く、あるんだよ。
ホラーだ。
しかも今はエプロンつけてる。
俺が当然男がいるはずのない学校で、内藤にむかって「女の子のエプロンいいよね」と言ってからこれだ。
意味なくエプロン着用だ。
もちろん、なんか調理場の男の人がつけるようなエプロンだからおかしくはない、ってか、ホラーの人肉捌く人みたいだからやめて。
怖い。
「お前はいつ寝てるんだよ」
俺は男に向かって手を伸ばし、頭を撫でていた。
男は嬉しそうに目を細めるから、もっと撫でてやる。
いつも俺より後に寝て、俺より先に寝てる。
安全のために隣りで誰かを寝かしたりしなかった男だから、俺の隣りでも寝れないのだろか。
「人の隣りで寝るなんて危なくて眠れねぇと思ってたんだが、お前の隣りだと寝顔がみられなくなるのがもったいなくて眠れねぇ」
真顔でいわれた。
呆れる。
なんだよ、それ。
まあ、俺が学校とか行ってる間コイツ暇だし、そこで寝てるのかな。
でも撫で続けてやるとウツラウツラし始めた。
可愛い。
やばい、
可愛いって俺言った?
言ったよね?
ヤバい・・・。
でも、ウトウトしてる男はかわいくて、俺はなでながら起き上がり、男の頬にキスを・・・、
しかけた時、インターホンが鳴って正気に戻った。
何したんの、俺。
何してんの?
確かに気持ちいいこと沢山してるし、この男に何らかの責任を感じ始めてるけど、でも違うだろ、違うだろ、そういう甘いのんではないだろ!!!
俺はしかけたキスを踏みとどまった。
セーフ!!
ギリギリセーフ!!
「誰かなあ・・・」
俺は気まずさを明るい声でごまかし、だるい身体で身体を完全に起こす。
寝ていたはずの男の目がクワッと見開かれた。
凄まじい怒りに溢れて唸り声とともに、瞬間で跳ね上がる。
お前起きてたのか・・・。
男は玄関に飛びかかった。
俺がキスするのを邪魔した者を引き裂くために。
俺は慌てておいかける。
宅配便の人や近所の婆ちゃんだったらどうすんだ。
今のコイツなら見境ないぞ。
でも、たっぷりディルドで犯された身体は腰が抜けてて、俺は這うようにして、玄関に行かねばならなかった。
生きていて、誰か知らないけど!!!
俺は必死だった。
でも、大丈夫だった。
男に襟首を捕まれ片手でもちあげられていたのは、婆ちゃん達やじいちゃん達をバスでおくってくれたドクターだったからだ。
男の知り合いの無免許医で詐欺師。
いいや。
悪者だし。
俺は這ったままUターンして、布団に戻ろうとした。
「お願い、助けて、助けて、見捨てないでぇ・・・」
ドクターが大声で泣いた。
近所の手前のためだけに、俺は男に止めるように言ったのだった。
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