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第41話
「止めるってお前どうする気?」
内藤の声が心配そうた。
自転車が車をとうやって止めるかって?
「なんとかする!!」
俺は答えて先回りする。
建物の間をすり抜けて、目的地の交差点へ先回りする。
「今どこだ?」
内藤に位置を確認する。
内藤は答える。
内藤は車を追跡してる。
長い時間スピードを出して走るなら、内藤の方が得意だ。
だか、瞬間スピードなら俺のが速い。
俺は最短で向かう。
「次の交差点で止める。今どこだ」
その前の交差点で止まってた。
「車の前に何台いる?後ろには、何レーン目を走ってる?」
確認をとる。
前にも後ろにも車はいないらしい。
道路は高速の入口に近づき空いてきた。
スピードは上げられてしまうだろう。
でも。
よし、これでいける!!
信号変わる前に目的の交差点についた。
こっからは、度胸だ!!
自転車を歩道に止めておりた。
自転車をそこに置いた。
タイミングを見計らう。
やったことはない。
だが、できるはずだ。
出来る。
俺ならできる。
フワが乗る車が見えた、俺は走って車の前に飛び出す。
運転手さんの驚く顔がみえた。
悪いとおもった。
後部座席で、身体を絡ませている、フワと男まで綺麗に見えた。
アドレナリンはバッチリだ。
ブレーキ音、その前に飛ぶ。
ボンネットで転がる。
身体の力を抜いて。
宙に浮く。
てもこれは、車にはねられた力ではなく、自分で飛んだ力だ。
落下に備える。
着地は肩からにはなったが、跳ねられたわけではない。
本来ならここでじっとしていなければならない。
これは、俺が常連さんの一人から聞いた「当たり屋」のテクニックなのである。
車に怪我なくぶつかる、もしくはそう見せかけることで相手からお金を貰う人達のことだ。
詐欺というには乱暴すぎるし身体を張りすぎだと、凄腕詐欺師だった常連さんの方はバカにしてたけど、
「身体が動かなくなったらしたらだめだ」と元当たり屋さんが言ってた通り、これは過酷な肉体労働だ。
だが、当たり屋がしたかったわけではない。
俺は車を止めたかっただけだ。
当たり屋は車を止めてこそ、当たり屋なのだ。
そして車は止まっていた。
後続車がいないことは知ってたから、できた。
後続車があったなら、それには跳ねられていた
ヨロヨロと立ち上がった。
人を跳ねて逃げる車はいない。
ましてや、ちょっとした有名人なら。
ネットでは有名なんだろ?
はしる車でセックスしてても、その相手が男でも、そんなことはむしろ武勇伝になるかもしれないが、人を跳ねたら話は別だろ。
車から飛びだしてきたのフワだった。
ズボンだけはかろうじて上げていたが、胸ははだけ、俺が男にされたみたいに跡をつけられた身体を隠そうともしない。
ちなみに俺は、なんとかこの季節に不自然な首まで隠れる服を着ている。
さすがにギプスをつけてはうごけない。
まだ消えてないけど、前よりは薄くなってるから多分、大丈夫。
「大丈夫!!大丈夫なのか!!」
フワは泣き叫ぶ。
俺の腕をつかんで揺さぶってくる。
「大丈夫だ」
俺はフワを抱きしめた。
捕まえた。
「このバカ!!」
めずらしく内藤が怒鳴っている。
自転車を止めて駆け出してくる。
少し遅れてやってきたのだ。
内藤を怒らせるのは怖い。
結構怖い。
でも、とにかく。
「フワ。話がしたいんだ」
俺を抱きしめて泣いているフワに俺は言った。
交差点を止めたから、クラクションが鳴り始めていた。
でも。
もう俺はフワを離すつもりはなかった。
「君はいつも。むちゃくちゃだ」
フワは泣いて、そして、笑った。
「俺から逃げるなフワ」
俺の言葉にフワは頷いた。
泣きながら。
俺はフワを捕まえたのだった。
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