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第47話

 俺は立ち上がった。  そして、さっきまでは普通の引っ越しのトラックだと思っていたそのトラックに向かって走る。  フワはわけがわからず、呆然としている。  そらそうだ。  数秒前に頭を潰されかけたんだからな。  内藤の声で伏せてなかったら、フワの頭は鉄の柵により破壊されていた。  トラックの前で咆哮している化け物を通り過ぎ、とりあえず、俺はトラックの中をのぞき込んだ。  普通なら引っ越しの荷物がはいってるそこは、なんたかわからない機材が並び、モニターが沢山並んできて、フワの家の中が映し出されていた。  こんな時間に引っ越しのトラックなんておかしいと思ってたよ。  「隠しカメラじゃないから、これはドローンだからベランダからの撮影だから!!」  ヘッドホンをつけて、手にコントローラーを手にしたドクターが椅子に座って何か言ってた。  ドクターは、この男に言われたら何でもするのだ。  男と一緒に俺を監視してたんだろう。  ドローンか。  それは盲点だったわ。     「ドローンだけか?」  俺は聞く。    「・・・・・まあ、色々。フワ君のパソコンをハッキングしたり、AIスピーカーとか使ってるから色々やりやすかった。でも盗聴機やカメラは誓ってしかけてない」  何故かそこはやたらと強調してくるが、一緒だろ。  いや、男にカメラや盗聴機は止めろと言ったのを、そこだけは律儀に守ってるのか  だが、そういう意味じゃない!!   ドクターに何を言っても無駄なのでもう言わない。  ドクターは男の言いなりなのだから。   本人だってこんなことしたくないのだ。  本業の詐欺をさぼって、大学生男子の生活を監視して何も楽しいわけがない  俺はため息をついて、トラックの前で仁王立ちになっている化け物の隣りにいく。  男はフワを睨みつけていた。  怒りを押さえつけているのがわかる。  俺がいなけらば、フワを引き裂いていただろう。    「おい!!」  声をかけてもフワを睨むのを止めないから、殴った。  思い切り鳩尾を。    ストーキングされてたんだこれくらいはいいだろう。  思い切り腹にパンチを入れたのに、全くきかなかった  お前は、岩か!!   手のが痛いって・・・。  どう鍛えたらそうなる。    「オレだけだろ」  俺を見下ろし、男が必死で言い募る。  俺の両肩を掴み揺すってくるが、その手の力は優しい。  俺を潰さないように。  でも悪魔みたいな顔で。  内藤は物陰に隠れてしまっていた。  フワはポカンと目を見開いている。  そら。  そら、そうだ。  俺も初めてこの男を見た時、身体の半分を炎のタトゥーて覆われた、生きながら焼かれているような男を見た時、見なかったことにしようと思った位、嫌だったからな。  ああ、クソ。  これを可愛いとか思うからどうかしてる。    怒ってる理由は察した。  俺は鋭いんだからな。  誤解したか。  フワと俺を。  だが、こればかりは、誤解してもしょうがないシュチュエーションだったのは認めよう。  だが、フワの頭をつぶしかけたのは問題だが。    「落ち着け。お前だけだ」  俺は男に言う。   言うしかないし、まあ、事実だし。  「俺だけだと言った」  男が言い募る。  「そうだ。そうだ」      認める。  確かに、そう言った。  「だから、誰も殺すな」  そこ一番大事なとこ。  男は顔を歪めた。  鬼の形相だ。  フワが動いた。  俺を助けに走ってくる。      それを見て男が吠える。    獣の声で、髪の毛を逆立て、裂けたように口を開いて。    フワを喰う気だコイツ。  「ダメだ!!」  俺は叱る。    「フワも止まれ!!」  フワにも怒鳴る。  フワはなんか驚いて俺を見つめてる。    この男が何なのかわからないのだ。    フワ。   俺もコイツが何なのか未だにわからない。  男は唸る。     納得できないと。  オレだけなのに。   オレだけなのに、お前をアレは抱きしめたと、唸り声だけでそれを表す。  俺の犬なみにお前感情表現豊かだな。  犬も言葉こそ話さなかったが、唸り声や目で訴えてきた言葉並みに。   だが。    「人間ならば言葉で話せ」  俺は人間として要求する。  「キスだ。キス!!俺だけだろ!!」  男は人語を話したが、その要求はとんでもなかった。     ここで。  キスしろ、と?  可愛い女の子だったなら。    「じゃあ、キスして!!みんなの前で!!できるでしょ!!」  って言われるのはちょっと萌える。    だが。  ここで?  友達の前で?  だか、男の目が燃え上がっていて。  でもその奥に痛みがあって。    その痛みに俺は反応してしまった。  「・・・こいよ」  俺はため息をついて腕を広げた。  男は、唸りながら俺を抱きしめた。    性急に唇が合わせられ、いつもより乱暴に舌で唇を割られた。    軽いキスをする積もりだった俺は慌てる。    コイツ。  エロいのするつもりだ。  エロいの!!  でも。  もう止められなかった。    舌は俺の唇の中を犯していた。  絡められ、舌をこすりつけられた。   舌を噛まれ、吸われ、唾液をそそぎ込まれる。  煙草の味のするそれを、俺は喉をならして飲んだ。  唇を噛まれ、甘く挟まれた。     チュッと吸われ、噛まれ、舐められる。  キスが甘くて。  キスで舌をフェラされて。     俺の腰は揺れるし、頭はシロップ詰めたみたいになっていく。     「オレだけ・・・」  安心したように男が囁いた。  「オレの味だけ。ここはオレだけの」  男がの指が優しく、まだ消えてない首の跡をなでた。  やっと唇が離れた。       ヤバい。   勃ってる。    頭をひやさないと!!  俺は男を押しのけた。     男が服の上から股間を触ってきたからだ。  何すんだ、公道で!!  キスでもおれにはハードルが高いのに!!  男は不満そうだか、抵抗はしなかったし、とりあえず獣から人間には戻っていた。  「落ち着け。そして、家に帰れ」  俺は男に言い聞かせる。    男はムッとしているが、盗聴機も隠しカメラも使ってはいないが、ストーキングはしていたことはバレたので、言い返してはこない。  これについてはまた、帰ってからだ。  「ソイツは何なんだ!!」  フワがオレに向かって怒鳴った。  何なんだろうな。  いや、ホント。     俺も答えようがない。  でも、フワが真っ青な顔ででも震えながら言うから。  え?  そんなにコイツ怖い?  怖いよなぁ、と思う。  「何なんだ!!」  フワは明らかな殺意を持って男を見ていた。  駄目。   フワ。  俺の手前むやみに手は出さないと思うけど、でもさっきお前を殺そうとしたところだから、ソイツ!!  俺は答えなければならなかった。    答えなければ。    「俺の犬だ!!」  言ってしまってから後悔した。        人間相手にこれはない。     だが何故か男は喜び叫び、フワは凍りついた。    「ボクが犬になりたかったのに・・・」  フワが泣き崩れる。  なんだよ  なんなんだよ。  俺は途方にくれた。  

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