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第50話

 一回だけ、なんか言わなければ良かった。  俺の性器の根元になんかつけられた。    リングみたいなヤツ。  それのせいでイケない。        いや、イケるけど出せない。  俺は、俺は基本は後ろでイク人なんだわ。   そうされてしまってるんだ。  俺は風呂の壁にもたれかかりながら喘ぐ。  俺の家の風呂は広い。    元々風呂のなかった長屋なのだ。  そこで一部屋潰して改装して、風呂にしてるから、スペースはかなり広い。(風呂桶自体はそんなに大きくはない)  俺の背中か痛まないよう、濡れた床にバスタオルを引いて、その上で色々されているのだ。  綺麗に男は隅々までオレの身体を洗われた。  そして、男は俺の身体を存分に味わっている。  男的には風呂なんかどうでもいいらしいが、俺は絶対に洗ってからじゃないと嫌なのだ。  脚を開かれ、腰を持ち上げられ、男は存分に穴を舐め、舌でそこを出し入れし、唾液を注ぎこむ。  熱い生き物みたいみたいな舌が気持ちよすぎて、腰が揺れてしまう。  「・・夕飯も食って・・・ないし、作ってな・・いのに」  俺は文句を言ってはみる。  まあ、作り置きはある。  今日遅くなるから、八宝菜と餃子を冷凍して・・・男でも温めるくらいはできるだろう。  でも、こんなに感じでされたら、終わっても食べれないかも。  疲れすぎて。  男は俺の穴をたっぷり舐めて濡らしている。  甘く濡らされて狂い、舌の繊毛さえ感じてしまうのは、穴周辺が人体の中でも神経がもっとも多いところだからともう知っている。  舌で出し入れされて、俺は声を殺すため、両手で口を抑えて背中を反らす。     出せないけど、もう中だけでなら何回も何回もイってる。    「お前のチンポ、舐めてやりてぇし咥えてやりてぇし、飲んでやりてぇが今日は一回だけだからな・・・俺だけなんだ。これからずっと俺だけなんだ・・」  男は幸せそうに言った。  あの悪魔はどこに。  俺の目がおかしくなったのか。  男は焼かれている悪魔ではなく、褐色の肌の普通の男に見えた。  やけに男前なだけの。  瞳の奥で燃える炎を写したようなその瞳の色さえ、温度をさげて、もやすのではなく、暖かい色に見えた。           ケツ穴への異様な執着がなければ、いつになくロマンチックと言えたかもしれない。  でも、残念なから、コイツの全ては俺に挿れたいためにあるので、キスより先に拡張だったし、穴ナメだった。  ド変態だ。  指でしっかり広げられ、何度も中でイカされる。  ローションを注ぎ込まれ、慣らされたそこに、いつもよりデカいのをあてがわれた。  また新しいディルドだ。  どこで買ってくるんだ。  でも、まだ男のよりは小さい。  ここから先は快楽よりもトレーニングだ。  息をはいてからだの力を抜く俺と呼吸をあわせて、男が押し込んでいく、作業だ。  「もう、いける。いつでも、オレのを挿れられる」  全部おさめて、抱きしめられながら、そう言われた。  嬉しそうだった。  ホント?  でも、これよりデカいだろ、お前の。  肩で息をする。  正直。  まだ、よくはない。  慣れたなら後ろはたまんないけど、またこの大きさは  慣れてない    「今日はおもちゃを挿れるだけでいい」    男は囁いた。    「お前の中にはもう・・・いつだって入れる。入れるんだから」   男は俺のチンポにはめてたリングをとってくれた。  後ろのせいで萎えかけていたそれを男は咥える。     欲しくてたまらないみたいに。  俺を気持ちよくさせるためだけに。  男のはガッチガッチのギッチギッチなのに、それなのに、俺のが優先で。  不覚にもキュンときたら、後ろが締まって、感じてしまった。  声を出しかけて堪える。  身悶える。  「可愛い。たまんねぇ、可愛い、可愛い、可愛い」  男が笑った。  いい笑顔だった。     悪魔じゃない。  いい男だった。  悪魔じゃない。  俺がお前だけのだとおもうだけて、お前そんなに人間な顔になれるの?  ホントは。  ホントは、スゴイ男前なんだな。  俺が女なら惚れてる。  いや、まあ、今でもそう、可愛いって思ってる。  そう思ったら、中が蠢き、また、勝手に気持ち良くなる。  おかしい  おかしい  俺おかしい。  こんなんでお前に挿られたら俺どうなっちゃうんだ?  怖くもなった。  咥えられた。  リングは外されたけど根元を抑えられて、たっぷり愛された。  俺の好きな事を全部するために、すっかり堪え性がなくなってすぐにイってしまうようにされてたから(誓ってもいい早漏なんかじゃなかった、男のせいだ)、イかないように根元を指で締めて、でも、とことん気持ち良くされた。  俺のためだけに。  先端の穴をほじる舌も、先を吸う唇も、強く吸うデカい口腔も、裏筋を責める舌も。  全部俺だけのために。  「可愛い」  それしか言えない男。  「オレだけ・・・」  それだけ、それだけ。    それだけの理由で幸せそうな男。  愛してるも、愛して欲しいも何もない男。  それを知らない男。  可哀想で、愛しかった。  だから、やっと許され、男の口の中に痙攣しながら、放った後、男の股間にむしゃぶりついた。      気持ち良さよりも。  与えてやりたかった。  後ろにディルドを突っ込んだまま。  男の性器を咥えた。  デカいそれをナメて、唇や舌を使って弄る度、俺の穴はディルドを締め付け、感じさせてきた。  俺の穴はディルドを【モノ】ではなく、【男】そのものとして認識した。   愛しい。  だから気持ちいい。  締め付け、蠢き、欲しがって、動かさもしてないのに自分で気持ち良くなる。  揺れる尻を止められないまま、男を口で愛した。  喉まで使って男の性器を愛した。  気持ち良くなって欲しかった。    ああ、そうだ。  この男は。  俺のだ。  男ががまんできないように腰を激しく使うのを許した。  苦しいけど気持ちよかった。  中でもキュンキュン感じてた。    ほとばしったモノを夢中で受け止めた。  飲んだ。  そして、出した後のそれを愛しさに舐めながら、男を見上げて言った。    口の端から男の精液を垂れ流しながら。   「俺のだ」  男のはすぐにまた硬くなり、、ちよっと怯えたが、でも、男は泣きながら俺を抱き締めた。  絶対に俺を「自分の物」とは言わない男。  絶対に俺を「愛してる」とは言わない男。  俺はこの男が愛しかった。  そうだ。  ちゃんとする決意を決めてわかった。  これは愛だ。  あんまり非現実的だから、恋を飛び越えてしまったが、これは愛だ。  「ちゃんと愛してる。そこは分かれよ。こんなのお前にしかしない」  ディルド突っ込まれ、男のを咥えてのんでやるとか、この男以外には誰にも許さない。  男は泣いてた。  泣きまくってた。  その目元にキスしたら、涙がさらに溢れた。  俺が困ったヤツだな、と笑ったらやっと止まった。  「飯食って寝るぞ。明日からはしないといけないことが沢山あるからな」  俺は言った。  甘い時間はおしまいだ。  でも、ディルドを引き抜かれて俺がまたイったのは内緒にしたい。    もう、前より先に後ろでいく身体になってしまった・・・。  そっからずっと男は勃起させてたけど、「今日はおしまい」を受け入れた。  俺も、ずっとひっつきたがるのを許した。  何度も俺の髪に口付ける男に包まれて眠った。  認める。    受け入れてしまえば。  これは結構。   幸せだった。      

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