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第53話

 パーティーがあるのだ。    フワは言った。  新緑会のパーティーが。    高級ホテルのスウィートルームで。  女の子達も、女も、そして男も集めて。  淫らなパーティーがあるのだ。  フワも参加することになっていた。    「その様子を録画、録音、写真にとる」  フワはそこに参加する為に、新緑会に繋がる男達に身体を開いてきたのだ。  フワはビッチを演じてみせていた。  誰彼問わず、セックスを楽しむ男を。  フワは美しく、魅力的だったし、フワは自分をどうみせればいいのかを知っていた。  隠した印を見せるだけ。  フワはうち明けたのだ。    児童虐待の過去を。  信じられないことに、それを知ったからこそ、彼らはフワを自分達の獲物に加えた。  ゲスの魂とは信じ難い。    良心がないからこそ、詐欺師が詐欺の被害者を再び狙うように、そいつらも被害者こそ狙うのだ。  安心して狙える獲物として  「そうしてもいい者、貪れる者」だとして。  でも。  フワは、貪られたわけじゃない。  そいつらの正体を暴くために、貪られるふりをしただけだ。    フワはとうとうそのパーティーに呼び出された。  楽しく貪れる肉として。  他の女の子達と共に。  女の子達には金。  フワにはコネ。  それがヤツらの免罪符だった。  フワはコネなどいらない。  だがそれに惹かれたフリをした。  あの女の子を集めている美容サロンの女も、フワと同じように身体を差し出したことがあるそうだ。  フワは言う。  あの女は確かにゲスだが。  昔は被害者だったのだろうと。  自分の母親のように。  繰り返すのだ、  繰り返される。    パーティーの日にちは決まってた。  女の子達を犯し、フワを貪り、呼ばれた女や男達とヤる。  セレブ達の、密かな淫らなパーティーだ。  「スウィートルームの客は、記録には残らない。客室の人間が個人的に呼んだ客だから」  フワは言う。  女の子達はそこに来てなかったことになるのだ。  「全部記録する」  それをブログで流す。    流すものには女の子達の顔はわからないようにする必要はあるが、全てを記録して証拠としては置いておく。    その後の裁判を考えていた。  訴えて来るのはわかっていた。  全てを嘘にして、フワを叩きのめしに来る筈だ。  自分達の行いをなかったことにして。  フワは覚悟の上だった。  自分を喰わせるつもりだった。  乱交パーティーの獲物になるつもりだった。  証拠を得るために。  「ボクを嫌いにならないで。ボクがそこのパーティーてどんなに汚いことをされても、ボクを嫌いにならないで」  フワは俺に哀願した。  膝をつき、俺の手を握りしめて。  「あの時だって、君に見られたくなかった。君だけには知られたくなかった。でもでも、君がボクを嫌わないでくれたからボクは生きられた」  フワの声は悲鳴のようだった。  「嫌うかよ!!」  俺は怒った。  だか、俺はもうフワにそんな真似をさせるつもりはなかった。  フワは全てを記録するつもりだったから、女の子だけでなく、自分を犯してる連中さえ撮影するつもりだった。  フワはそこまで捨て身だった。  だが。   俺はそんなの許さない。  フワをこれ以上傷つけない。  たとえ、正義のためだとしても。  「フワも女の子達も、もうそんなことしなくていい」  俺は言った。  「でも、それでは・・・撮影が、証拠が・・・」  フワが言いかける。  「しようとするところまで撮れたなら充分だろ。証拠としては完全じゃないとしても」  俺は決めてた。  どうせ・・・刑事罰としては罪に問えないのだ。  「パーティーは途中でぶちこわす。そして、お前と女の子達は逃がす!!」  それしかない。  なんとかしてみよう。  そう、俺には。  切り札がある。  あるんだからな。          

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