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第54話
「なんで僕が切り札なんだよ」
ドクターが怒っていた。
俺が緊急にドクターと男を呼び出したのだ。
男の携帯に電話したらすぐに来た。
あまりにも早く来たので、また近くでストーキングしていた可能性を俺は疑っていた。
が、今はいい。
「あいつの言うことを聞かされるのは仕方ないけど、僕と君とは無関係なんだぞ、君に従う義務はない」
ドクターがガタガタ言ってるがしったことじゃない。
「何言ってんだ。俺のストーキング散々しておいて。どうせ悪いことたくさんしてるんだろ、たまには世の中の役に立て」
俺はドクターの言い分など聞くつもりもないし、利用することに良心か咎めることもない。
罪滅ぼしに役にたて。
そうとしか思わない。
男は俺のパートナーだ。
男は俺に協力したいと言っている。
男の言うことを聞くのなら、俺の言うことを聞くのも変わらないだろう。
強引だが、仕方ない。
使えるものは全て使う。
「僕じゃなくて、ソイツにさせろよ。僕より確実に始末するぞ」
ドクターは泣くが、コイツに任せると肉体から記録から全て消し去りそうなので頼めない。
そういうのではないんだ。
そうしたいと思ってはいても。
「今回の目的は、だ。消えることのない印をこのパーティーに出ていた参加者達に植え込むことだ」
俺は言った。
罪には問えないだろう。
問えたとしてもそんな大したことにはならない。
貪られている子供達は、誰の後ろ立てもない無力な子供でおそらく問題も抱えている。
そういう子供を選んでいるからだ。
そして、金も立場もある大人。
優秀な弁護士もついてくるだろうから。
大した罪にはならない。
知ってる。
でも。
ネットに流したものは消えない。
消しても増えて流れて行く。
キラキラした連中の、本当の姿を暴き出す。
子供を抱くような連中だと知らしめる。
それが今のこの国では大して責められることがなかったとしても。
この先は変わるかも知れないし、少なくとも、この国から出たなら十分責められるものになる。
雑誌や新聞テレビ、ネットニュースで「未成年と知りながら淫らな行為をした」
が本当はどういうことなのかをあぶり出す。
その事を示したい。
それをその社会が許さないと信じたい。
これは許されないと、社会が変わることにかけたい。
罪に問われることがないのなら、ここから先を変えたい。
画像や動画は女の子達に配慮しなければならないし、後の裁判の証拠となりえるものも必要だ。
「セッティングは任せた」
俺はドクターに丸投げした。
盗聴器や隠しカメラがなくても俺をストーキングして監視できたのだ。
今回は何をしてもいいんだから何でもできるだろう。
必要な動画を撮ってくれ。
「何でボクなんだよ!!一銭にもならない!!」
ドクターはギャアギャア言っていた。
「やれ」
低い声で男が言ったので、ドクターは黙った。
これで映像の問題はクリアした。
後はどうやって、パーティーを途中で止めるかだ。
俺はもう、フワや女の子達を貪らせたくはなかった。
証拠を得るため際どいところまでは仕方ないとしても、絶対にあんな連中に好きにさせたくなかった。
「今までされてるんなら、最後にもいちどされても同じだろ?」
男が不思議そうに言ってきた。
男には完璧な証拠を求めない俺が理解できないのだ。
確かに、パーティーを最後まで終えて、映像さえ撮れたならそれで目的は達成する。
でも、違う。
違うんだ。
許してはいけないんだ。
本人達がそれでもいいと思っていたとしても。
そんなことは許されない、そんなことを許さない人間がいるんだってことをフワも女の子達にも知って欲しいんだ。
「そうだね。ボクはこの世界に助けがあるとしった。
知ってる。それは君が飛び込んできたから。犬と一緒に空から降ってきたから。助けがあると知ってたから・・・生きられた」
フワはそう言ってくれた。
女の子達にも知ってほしい。
助けがあることを。
フワの人脈から、助け出した女の子達のケアにあたってくれる団体ももうみつけてある。
女の子を食い物にする連中から女の子達を守ってきている民間ボランティア団体だ。
型どおりにしか動かない国の児童福祉機関では、女の子達を非行として扱いはしても助けないことをフワは良く知っていたからだ。
「ここなら、少なくとも理解はある」
フワはそう言っていた。
「火をつけて全部燃やしてしまえばいいじゃねーか。パーティーも何もかんも。誰の手も汚さないで、連中を殺せるぞ。子供だけ助けりゃいいだろ」
男が何か言ってるが無視しておこう。
お前はフワも燃やす気だしな。
男とフワは敵対心を互いに隠そうとはしていなかった。
そう。
パーティーを中断して、フワと少女達を救い出さないといけないのだ。
そこだ。
そこ。
ここをなんとか考えないと。
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