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第56話

 詐欺をしない詐欺師ほど有能な者はいない。  これは男のセリフだが、これ、マジ。  今回ドクターは作戦の立案から、指揮までしてくれた。    パチパチパチパチ  拍手で褒め称える。  だって俺がやったら意味なく捕まるだけだからな。    フワは実名を出して、裁判も辞さないつもりだったが、これは民事だ。  だが俺がフワや女の子達を救い出すのは、捕まったならそのまま刑務所に行く刑事罰の対象になる。  おかしくない?  未成年者を貪る連中から、未成年を助けることが犯罪になるなんて。  でも、そうなるんだから仕方ない。   でも、大人しく捕まってやる気はなかった。  フワは自分も女の子達も犯された後で訴えるつもりだったけど、そこまでさせたくない。  なので、フワや女の子達を何かされる前に助けだす。  そして、捕まらないようにする。  具体的な作戦はそう、有能なドクターにしていただいた。  「ふざけんな!!何でボクが!!こんな金にもならないことを!!」  ドクターはキーキー言っていた。  「あれだよ、あれ。義賊ってやつ。愛される犯罪者になれよ」  俺は適等に言う。    利用することにまったく悪気は感じてない。  心の底から。  「愛される犯罪者なんか、なんの意味があるんだよ!!そんなもの目指すバカがどこにいる」  ドクターはグズグズ言ってた。     「いないならあんたが目指せよ、頑張れ」   俺はテキトーだ。  「お前なんか、コイツより嫌いだ!!」  ドクターは男を指差して言った。  嫌われてるのは男も俺も気にしてないので、構わない。    詐欺師に好かれてどうする。    ただ、誤算だったのはドクターは内藤がえらく気に入っているってことだった。  それを隠そうとしない。  内藤と犯罪者を関わらせるのは嫌だったが、仕方なく、内藤とドクターを引き合わせた。  まあ、俺をストーキングしてるから、おそらく、ドクターは俺より内藤に詳しいとは思ったが。  「詐欺師だ。あまり話すな。てかコイツの話は聞くな」  俺は内藤に言った。        詐欺師の話は聞いてはいけない。    詐欺師の声を聞いた時からもう、詐欺が始まっているからだ。  無視して、耳を塞ぐしかない。  彼らはあまりにも魅力的だから。  元々内気だし、ドクターみたいな陽キャが苦手な内藤がドクターに近づく心配はなかったのだが。  だが。  ドクターの方が内藤にやたらとからんできた。  どうやら、見張っていた時から内藤には目をつけていたらしい。   男が「ストーキングがバレる」から内藤に関わるなと言ってたので、何もしなかったが、この作戦指揮で関われるとなったら、やたらと内藤に構いだした。  内藤にかまうな、近寄ったらダメだって言ってるのに。  「内藤くん。内藤くん、こっち来て?」  ホテルのボーイの服を着た内藤を、ドクターは呼んで、シャツの襟直す。    それ自体は問題ないのだが。  何故、髪に触れる。  何故そこまで近寄る。  「近い近い近い!!」  俺は最近首にかけてるホイッスルを鳴らす。     これを鳴らしたら男が内藤からドクターを引き剥がす。  男にも言われてるはずなのだが、なんだかんだ理由を色々つけて内藤に近寄るのをとめられない。  内藤は欲望剥き出しの猛禽みたいな女にモテると思ってたが、どうやら男でも同じらしい。  なんかそういう奴ら限定のフェロモンが出てるのか。  内藤が怯えてるのは相手が男になっても変わらないが。  「・・・ちぇっ」  ドクターはしぶしぶ離れる。  本来なら、男ではなく、俺が叩きのめすのだが、今回はドクター頼りなので、ちょっと甘くはなってしまっている。  「さあ、作戦の確認をするよ!!」  ドクターの声に、俺達は作戦の確認を始めた。      

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