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第57話
「部屋に盗聴器?いまだにそんな方法?そんなわけないでしょ」
クスクスドクターが笑う。
ドクターは今日集まるメンバーの携帯にハッキングしていた。
「自分の携帯から盗聴されてると思うヤツは少ないからね」
これをするためのドクターの苦労は涙ぐましい。
携帯を店や会社やジムですりとり、ウイルスを仕掛けてまた返すという、かなり面倒なことを一人でやってくれたのだ。
盗まれたことにも気づかず返す返すもなんて、筋金いりの犯罪者に、しかできないからな!!
おかげでドクターは連中の携帯から好きな時に盗聴できる。
IT系の企業を立ち上げているヤツもいるはずなのに気付かれてないらしい。
「なんなら今日、女の子達の写真を撮ったり、動画を撮ろうとするヤツもいるだろう。コイツらが携帯に入れれる写真や動画はそんなのばかりだからね。みる?」
ドクターが集めた連中の携帯に入れた写真も、携帯からクラウドに上げた写真も。
犯罪モノばかりだった。
コイツらホント、最悪だ。
俺は吐いた。
妹位の女の子達が、おっさん達に貪られてるのを見て。
痛々しさしか感じなかった。
怯えた女の子の顔と。
死んだ目と。
男の汚い笑顔だけが焼き付いた。
これを何度でも見返していられる連中の汚さを嫌悪した。
やはり。
男の言うとおり、「全部燃やしてしまったら早いぜ」そうするべきなんだろうか、とも思ってしまったくらいだ。
これだけでも、十分、証拠にはなり得るんだけど、フワの実名告白と共に出すのなら、パーティーで何が起こったなかの写真や映像や音声が必要なんだ。
フワをハッキングの罪に問わせることは出来ないから。
「画像の方はこう」
ドクターはモニターにパーティーになる部屋それぞれを映し出す。
「どうやってカメラを仕掛けた?」
俺は驚いて聞く。
ドクターは企業秘密だと嫌がっていたが、吐かせた。
驚いた。
手のひらの半分位のサイズのクモのような機械。
ぱっと見、クモに見える。
これを部屋に侵入させたのだ。
ホテル内に放ち、人目を避けて、通路の壁や天井に、そして、エレベーターにのり、その部屋にむかう。
地道な遠隔操作だ。
人間に見つからないというミッションの。
ドクターは苦労して三台侵入させることに成功させていた。
徹夜で3日かけたという。
昨日は死んだように俺の家の二階で寝てた。
俺の家は長屋で二階もある。
築70年だし壁が薄いがめちゃくちゃ広い。
家賃が一万円なのは、前住人のひきこもりの偏屈な爺ちゃんが、二階で弧独死して、チーズみたいにとけてたからた。
臭いと、隣りの家にまてウジが発生して発覚した。
ドクターはその部屋で寝てたけど、別に教える必要はない。
しかし、ドクター。
実はすごいんじゃないの?
「僕はこんなケチな仕事をするような男じゃないんだ!!」
そう言ったらめちゃくちゃ怒ってた。
褒めたのに。
でも。
ドクターでも、女の子達を助け出すというのは難しいと言っていた。
なので。
そこは、だ。
男の意見を取り入れることにした。
さて。
作戦決行だ。
だが、その前に。
「俺の携帯ハッキングしてないだろうな!!俺の家にこのカメラグモ放ってないだろうな?」
そこは問い詰めておいた。
恐ろしい。
監視も盗聴も、携帯の中の写真も。
その気と技術と倫理がなければ、やりたい放題な世の中なんだぞ!!!
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