61 / 71

第61話

 フワはその日の内に告発ブログを発表した。    少女達との関係をみとめる音声。   少女達と男達の会話。  顔はわからないけれど、明らかに子供だとわかる少女を抱きしめている際どい写真、動画。  それらもつけて。    少女達の顔だけは写さなかったが、男達や女達の顔や、そして、自分の顔はフワはかくさなかった。  カルトのようなサロンの力関係の構造。    集めた女の子達に、新たな女の子を誘わせることで共犯者にするやり口。  それらについてもフワは書いた。    そして、かかわった人間を実名で書いていた。  フワは自分の過去も明らかにした。  親から売春を強要されていたこと。  コーチからの性加害。    全てを書いた。  「この先、自分のような子供が出ないで欲しい」  そう訴えた。  フワは信じている。  そう書いた。     子供を貪ることが当たり前だと思う、そんな人間の方が少ないはずだと。  それを「当然だ」などと思う人間の方が少ないはずだと。  子供を守って。  そう訴えた。  子供は犯されながら、一生懸命楽しいことを思い出して耐える必要なんかないし、それを選ばされる必要もないんだ、と。  子供に金や何かと引き換えに、選ばすこと自体が、間違っている。  選んだからその子供はそういう子供だと、そういう風に言わせるような連中を許さないで、と。  法律的には。  この国はそういう子供達に優しくない。  子供達が悪い、そう言い張る連中もいた。  でも。  でも。     かなり沢山の人達が。  いや、沢山の沢山の人達が。  フワのブログに同調してくれたのだ。  思っていた以上に。    男達はあの後、警察を呼ぶこともなかったが、ブログ発表で、警察の方から一応呼ばれた。  フワが発表した写真や動画から、事実を一部認めはしたらしい。    条例違反の罰金刑にはなるようだ。  これはフワのブログの衝撃に比べたら、大した罰にならないことは確かだった。  警察は、男達が語るホテルに現れた半分燃えた悪魔については、人間が壁を蹴破ったり、ドアを破壊するなんて出来るはずもないから、男達の作り話ということになったようだ。  フワもブログには書いてない。    焼かれながら暴れる悪魔など、いるはずがない。  実際に焼かれたのはフワだった。  フワは我が身を切り刻み、サロンの信者達からの誹謗中傷、興味本位の連中のゲスな言葉、それらをなげつけられながら、それでもやり通したのだった。  テレビにも出た。  インタビューにも答えた。  その全てで、責められた。    でも。   でも。  それ以上にフワを信じて支援する人達が沢山現れた。  そして意外にも、男達はフワを訴えなかった。  これについてはどうやらドクターが絡んでいるようだつた。  ドクターは男達の携帯の情報から、もっと違う筋のヤバいものを引っ張り出したようだった。  それは、暗い社会と繋がるものから、表に出ては絶対にいけない取引のようなもの。  倫理ではなく、それを表に出したなら自分達の存在が命が危なくなるようなもの。  ドクターは悪人らしく、ちゃんと使って脅して利益をだした。  そちらに金がかかりすぎ、フワを訴える資金力が奪われていたというのが正解らしい。  「子供を買う変態」    男達のその事実は明らかになったし、財産はドクターに根こそぎ削られた。  前ほど好きなことは出来ないだろう。  今ではかれらを忌み嫌う人達もいるのだ。  でも。  それくらいで済むのだ。  刑務所に入ることもない。    そんなものなのだ。  フワがこのために我が身を削って捧げたものに比べたならば、この男達はこの程度のことですむのだ。  俺はなんだか。  なんだか。  やりきれなかった。  「まあ、女の子達を引き受けてくれたあのシェルターに寄付しておいたし、それでよしとしようよ」  ドクターの言葉に頷くしかなかった。  これが。  これが。  精一杯なのだ。  でも。  でも。  テレビに映るフワ。  フワは綺麗で。  フワは闘っていた。  フワは戦うだろう。  これからも。  子供達のために。  フワは。  子供達のための。   性的に貪られる子供達、貪られた子供達のための団体を作ることを発表していた。  「助けが来ると、助けてもらえるんだと、子供達は知らないといけないんです!!」   フワはそう言っていた。    

ともだちにシェアしよう!