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第63話

 フワ。  フワ。  お前はまた一人で行って、一人で耐えようとするのか。  許さない。  俺の前に立派な男になって立つために、性加害にも耐えたフワ。  成功とか、立派とかじゃなくて、俺を頼って欲しかった。  子供だから何が出来たかはわからない。  でも、お前を一人苦しめることだけはしなかった。    今もまた。    苦しいところを一人で耐えようとしてないか。  ダメだ。  そんなのダメだ。  俺は知識のすべてをつかって、一番近いルートで空港にむかう。  一人でなんか行かせられない。  絶対だ。  川の堤防の上を走り、途中歩道橋に堤防から飛び移り、誰も知らないような裏道を通った。    本当は走ってはいけない列車の線路脇の舗装を道としても使った。  競技は知らないが、自転車でただ街を早く走り抜け、目的地に辿り着くということに俺は絶対的な自信がある。  道ではないところさえ、俺は道にする。  長い距離を走り抜けるのは内藤のが得意だけど。  フワがいつ出発するのかは聞かなかった。  でも、間に合うとか間に合わないとかじゃなかった。  俺は。     もう。    一人でフワを行かせたくなかったのた。  空港についた。  車ではこの時間ではこれない。  20キロ範囲位なら俺の自転車の方が速くつく。  俺は命より大事だとおもってた自転車を空港前に乗り捨てた。    相棒。  盗まれても絶対に見つけるから。  心の中て謝り、走りながら、ロビーに飛び込み、フワに携帯から電話をかけた。  「どこだ、フワ!!どこにいるんだ!!」  出たフワに怒鳴る。  フワはこの地方空港から、国際線のある空港に向かい、そこから外国に向かうつもりなのだ。  「・・・・・・信じられない。本当に来たの、この時間で?」  フワの声が震えてた。  俺はイラつきなから、たた闇雲に走る。  「どこだ!!フワ!!」  叫びながら走りまわる。  警備の人間の姿か見え始めたが、探すのを止めるわけにはいかない。    「フワ!!出てこい!!フワ!!」  俺は電話を離して叫んだ。  叫び続けた。    警備員よりも、少し早く。  誰かが俺を捕まえた。  誰か?  誰か、なわけがない。  フワに決まってた。    「   !!!」  俺の名前を叫ぶ。   昔のフワと同じ泣き顔。  「一人で行くな!!」  俺は怒鳴った。  「・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」  フワは俺を抱きしめて泣いた。  泣いて、泣いて、何度も謝った。  「俺は、お前が呼べばどこへでも助けに行く!!」  俺はフワに言った。  「うん・・・うん」  フワは泣きながら何度も何度も頷いたのだった。  

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