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第66話

 男に速攻で貪られると思ったのにそうじゃなかった。  男は俺を担ぎ走りながら電話して、空港近くの一番良いホテルの良い部屋を電話一つで取った。  電話相手はドクター何だろうな、とは思った。  部屋に着くまで、欲しくてたまらなくて、とにかく欲しかったのは俺で。    エレベーターの中で、そっと支えられるように抱えられてるだけでおかしくなりそうで、エレベーターの中で犯して欲しいとすら思った。  なのに。  なのに。    男は慎重だった。  俺の服を脱がすのも、俺の身体を洗うのも。  準備するのも。  俺の前はもうガチガチだし、後ろの穴は欲しがってひくひくしてるし、乳首だって尖ってるのに。  穴に指を挿れられ、解され、中を洗われるだけで射精してるのに。  優しく触られ、物足りなさに泣いた。  しろよ、俺を食えよ、犯せって!!  そう怒鳴っても、男はそうしなかった。  男のだってガチガチだし、いつになくでかいのに。  もう先走りで、濡れて光ってるのに。  泣いて胸を叩いたら、包み込むように抱きしめられた。  「もったいねーんだ。分かれ。大事なんだ、分かれ・・・」   低い声が困ったように言う。  こんな困ったような顔は見たことなくて。  でも、分からなくて泣く。      獣みたいに欲しいのは俺だ。  貪りたいのは俺だ。  男の首筋に噛みついた。    男が堪えるように俺の背中を撫でた。  それに感じて俺は喘いだ。    首から歯がはずれる。    「欲しい・・・欲しい・・・お前か欲しい・・・」  俺はわめいた。  男の性器に触ろうとした腕をからめらとられ、頭の上でまとめられる。    「頼むから、殺されたくなかったら・・・大人しくしていてくれ。なぁ?」  男は甘く囁いて、ちゃんとキスから始めた。  信じられない位甘く優しいキスから。  甘く舌を吸われて、噛まれるキスは、良かった。  良かったけど、オレは男の裸の腹に硬くなった性器をこすりつけ続けた。    キスじゃだめ。    キスだけじやだめ。    キスされながら、自分でイった。  男の腹に精液をぶちまけて。  「ホント、お前は・・・我慢が足りねぇ」  男は呻いた。  「してぇ、ぶち込んで、奥まで犯してぇ・・・」   俺は泣きながら訴えた。  「初夜だって言うのによ。大事に大事にしたかったのによ・・・お前はホント、ロマンチックじゃねーな」  男が苦笑した。  この男に言われたら終わりだろうな。  俺も思った。  でも欲しかった。  男が欲しかった。  「お前が欲しいんだよ!!欲しいんだよ!!意地悪すんなぁ!!」  泣き喚いたら、またキスされた。  でも。  キスしながらローションが注ぎこまれたから。  確かめるように中を指で広げられたから。  男が入ってくるってわかったから。  男の背中に爪を立てながらキスに応えた。  やっと。    やっと。      お前と繋がれる。  「・・・させてくれなかったのはお前だからな。俺じゃねーよ」  男は苦笑していた。  それは本当。  でも。  今、欲しいのは。  俺なんだ。  自分から脚を広げた。  男は俺の脚を押し広げ、穴にあてがい、ゆっくりと俺の中に沈み込んできた。  俺の顔を食い入るように見ながら。  熱いそれ。  今までつっこまれたモノの中で一番デカいそれ。  俺は涎をたらし、白目を向きながらそれを受け入れていた。  でかいの好き、気持ちいい、声に出して言った。  「腰まで振って欲しがって・・・とんでもなくエロいなお前」  男の声が掠れてる。     俺はヒイヒイ言ってる。    でも。  中で男のを欲しがって、締め付けて、からみとってるのが自分でも解る。  挿れられながら、蠢いて、男のを感じてる。  「あり得ねえ・・・お前・・・よすぎる。こんなの知らねえ・・・」  男が苦しげに喘ぐ。  耐え難いように、男は小さく痙攣した。  耐えてる。  可愛い。     そう思った。  そして、男の驚いたような顔が可愛くて笑った。  「・・・出してもいいんだぞ・・・早くても俺は、気にし・・・」  そう言いかけた瞬間、深く貫かれた。  「ざけんな・・・お前な、オレを早漏扱いなんかしたのはお前だけだからな!!」  男は怒ってた。  でも、それは余裕のない怒り方で。  必死なのがわかって可愛くて。  それで微笑んだら、余計に男は怒って。  「出してねぇよ!!」  (でも、出そうなんだろう)という俺の聞こえない声を拾いとり、男は乱暴に動き始めた。  それが。   それが。  良かった。    良すぎた。  奥を激しく突かれた。  その度に前から白濁が飛び散る。   大きく回された。  デカいのに広げられきった腸壁が敏感に感じて、苦痛寸前の甘さを送ってくる。    好きなところを擦られた。  そのデカいので、ゴリゴリされた。  「そごぉ、すきぃ!!」   喚いて背中に爪をたて、引っかく。  堪らなく気持ちいい。   身体が痙攣して、意識が瞬間白くなる。   ビルから落下してる怖さと、つぶれるような衝撃が快楽だと知る。  内臓を食い破ってほしかった。  腹を突き破って欲しかった。  欲しかった。  この男が。  「出してぇ、中に出してぇ!!!」  俺は願う。  孕みたかった。   そう妊娠とかじゃなくて、この男のモノを体の一部にしてしまいたかった。  「テメェ、ホントにどうしようもねぇな!!」  男が怒っている。  炎に包まれた、焼かれるような俺の男が。  俺だけの男が怒っている。  「殺しちまうだろ、黙ってろ!!」  俺の男は余裕なんかなかった。    余裕見せようとしてグダグダな。  俺と同じで、セックスに不慣れで、セックスに振り回されてる男しかいなかった。  好きな奴とセックスなんかしたことなかったんだってわかった。  コイツにだって、初めてなんだ。  好きな相手とのセックスは。  笑えた。   愛しくて。  お前。  お前、本当は結構若いだろ。  俺とそんなかわんねーんじゃねーの。  俺が笑うと、男は困ったような顔をしてそれが可愛かった。  これは。  俺の男だ。  俺だけの。  「俺の。俺だけの」  男にそういってキスをした。  ただ、唇に触れるだけの。  男は吠えた。    腹の奥をこじ開けられた。  そんなところがあることを知らなかった場所を。  「ぐがぁっ」  俺は変な声を出して、痙攣し続けた。  そこで感じる快楽は。  串刺しにされても知れる甘さだった。  腹の奥まで犯されて。  そこで放たれて。  意識なんか無くなってた。  でも。  犯され続けるのは知ってた。  だって。  俺の男は。  生まれて初めて。  愛を食って。  止められることなんかできなかったのだ。  俺も男を喰わせてやりたかったから。  かまわなかった。    たまに戻る意識。  中で放たれる感覚と。  貫き殺される甘さ。  それにまた気絶して。  でも。  殺されるならコイツがいい。  愛してるって一言も言えないコイツがいい。  俺が。  全部。  教えてやるよ。  力ない身体を揺さぶられ続けた。  

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