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第6話
女性を相手にする場合もそうだが、ホストクラブではその日の最後までいた客と閉店後にご飯を食べたりカラオケに行ったりするアフターという仕組みがある。
そのことを圭太は知っていたけれど、未だ瑠季とアフターをしたことはなかった。
圭太から誘うのも勇気が出ず、瑠季も誘ってくれないのだ。
アフターに誘ってくるのはそのホストの気分によるという話も聞いたことがあり、自分とは行きたくないのかなと思ってしまう。
また、大金を使った対価としてホスト側から誘うこともあるようなので、あまりお金を使っていない細飲みの圭太は、アフターに誘ってもらえるような身分ではないのかと諦めの気持ちもある。
大して金を使っていないくせに、時間を使う必要はないと考えるホストもいるようだから。
でも……。
「ねぇ、圭太さ、良かったらアフター行かない?」
珍しく琉季が誘ってくれたので、圭太は目を丸くした。
「え、いいの?」
戸惑って聞いてしまったけれど、琉季は間髪入れず返事をくれた。
「もちろん」
「じゃあ、行くよ。琉季さんと行きたい」
「じゃあさ、ソラも一緒に3人で行こうぜ」
今日は途中からソラも卓に着いてくれていて、3人で飲んでいた。正直『2人きりじゃないんだ』という気持ちも沸かないわけではないけれど、初めて誘ってくれたのだから有難く着いていくことにしよう。
「そうだね、行こうよ圭太くん」
ソラも乗り気だ。
「うん」
「で、どこ行くんですか?琉季さん」
「歌舞伎町なんだけどさ、新しいバーが出来たっていうからそこ行きたいんだけど、いい?」
既に行きたいところまで決めていたのか。用意周到というべきだろうか。
「いいね、じゃ、そこに」
琉季が行きたいと言ったところに行けるなら、迷うことはなかった。
「サンキュ!まぁ、圭太が行きたいところに連れていくのが本当なんだろうけどな」
「大丈夫だよ。歌舞伎町はちょっと緊張するけど、行ってみたいし」
「あ、圭太くん歌舞伎町行ったことないんだ?」
ソラが聞いてきた。
「ないよ。ここからも近いけれど、怖いから、何か」
楽しい歓楽街なのかもしれない。それでも色々な噂も耳にするし、事件が起きたりと物騒極まりないと思っていて今まで一度も足を踏み入れたことがない。
「へぇ。圭太って意外と良い子ちゃんなのか?」
琉季が少し小馬鹿にした雰囲気も混ぜながら、からかい気味に聞いてきた。
「そ、そんなことはないけど。事件に巻き込まれなくないから」
「まぁな。俺も初めてここらに来た時、歌舞伎町は怖かったな。こないだも、ホストが女の子と喧嘩しててさ」
「え、そうなんだ」
女を相手にするホストも、お客の女と喧嘩をすることがあるらしい。そういえば、朝方の歌舞伎町は泣いている女とか泥酔してふらふらの女があちこちにいると聞いたことがあった。大金を使って貢いでいるのに、想いが届かなかったり相手のホストに無下にされることで、店に通っては泣いて帰る女が多いのだとか。
男相手のClub Dandyguyのホストもそうなのだろうかと、ふと思ったが頭から思考を追い出す。
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