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第10話
圭太の初めての指名客は、中年の男だったが紳士的で、その点は救われたと圭太は内心感じた。
「君、可愛いね。今日はよろしく」
「ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします」
圭太は恭しく頭を下げた。
元々、礼儀を母から叩き込まれている圭太の態度に、客も満足したようだ。
まずは客のリクエストで映画を観に行き、その後で食事をしてホテルに向かった。圭太も経験が浅いわけではなく、先日の琉季との件も含めても幾らかは経験をしてきている。それでも、ウリ専の仕事を開始して初めての客だし粗相をしないようにしたいという思いもあり、少しは緊張をしているのだ。
けれど、ホテルの部屋に入るなり緊張はいくらか和らいだ。ラブホテルというとお姫様チックな部屋やゴージャスな雰囲気の部屋をイメージしていたのだが、圭太たちの入った部屋はシックな印象で変に異空間という感じがしない点が圭太としては良かった。
お互いにシャワーを浴びることになり、客が出てくるのを待つ。
本当は一緒にシャワーを浴びようと言われたのだが、それはまだハードルが高く感じられ「それは次回に」と断り、今回は回避した。
まぁ、そんなことを言ってはいられないだろうけれど。
2人ともシャワーを済ませると、ベッドに並んで座りキスから始まり段々と首筋、胸へと責める場所を移していく。
気持ち悪いなんて思わない。そんなことを考えていたら、仕事にならない。
仕事だと割り切り、求められたことはできる範囲で何でもする。もちろん、自分の肌だって晒すし触れさせる。
責めながら、相手の反応を窺う。気持ち良くなってもらわなければ仕事として失格だから。
自分でやると決めた仕事だし、好きな人としかしたくないなんて乙女な心があるわけではない。
だから、瑠季のためと懸命に頑張った。
奉仕中に瑠季の顔がチラついたとしても、お客を癒やそうとがむしゃらに身体を張ったのだ。
後はこの時間は無になる。
そうすることで、瑠季のためなら頑張れた。
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