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第12話
閉店時間になり、慌てた様子で瑠季が戻ってきた。
「ごめんな。立て続けにあちこち呼ばれちゃってさ、全然戻ってこれなかったわ」
「うん、大丈夫だよ。瑠季さんのイベントだし、多くの人にお祝いして欲しいしね」
放置された寂しさはあるけれど、それも圭太の本心。
すると、瑠季が顔を寄せてきた。
「寂しい思いさせた分、これから2人きりの時間過ごそうな」
「べっ、別に寂しいなんて……」
顔を朱に染めると、瑠季はニヤリと笑った。
「じゃあさ、前に待っててもらったカフェにいてくれる?」
「うん、分かった!待ってるね」
圭太は見送られて店を後にした。
カフェで15分ほど待ったところで、琉季がやってきた。自身のイベントが終わった後ということもあってか、彼はクタクタのようだ。
「ごめん、待たせた」
「ううん、大丈夫」
「なぁ、腹減らないか?ファミレスにでも行きたいんだけどいい?」
もちろん酔ってもいるのだろうけれど、営業時間内は忙しかっただろうし腹も減るだろう。
「そうだね。僕もちょうどお腹が空いてきたところかも」
「よっしゃ、じゃ近くのとこにでも行くか」
「分かった。いいよ」
圭太も快く立ち上がった。
「疲れた~~」
レストランの席で、メニューを広げながら琉季が呟く。
「やっぱり、今日はいつもより賑わってたよね」
「だな。お客さん多く来てくれたし、良いイベントになったと思うよ。お前のタワーもあったし、恰好付いたかな」
バースデーイベントといえば、シャンパンタワーが華を添えてくれるもの。主役が担当しているお客に頼んでタワーをしてもらうのだが、そのタワーの規模によっても差があり、規模が大きく豪華になればそれだけ金を掛けたことにも比例してくる。
「そう言ってもらえると、僕もお金掛けた甲斐があったよ。良かったね。素敵なイベントになって」
「サンキュ。来年はもっと頑張らなきゃなぁ」
「頑張って」
圭太が何気なく発した言葉に、琉季は一瞬動きを止めた。何とも言えない、不安げな表情をしている。
「……どうしたの?」
「なぁ。来年も、そばにいてくれるんだろ?」
まるで、目の前にいる圭太が傍を離れるのではないかと危機感を抱いているようだ。
「もちろん!僕はずっと琉季さんを支えていくから」
迷うことなくそう言うと、琉季の表情は一転して疲れも吹っ飛んだような、明るさに満ちたものへと変化した。
「良かった!疲れも酔いもぶっ飛んだわ。お前がいるからこの仕事続けていられるよ」
「ほんとかなぁ」
そう言ったのは、茶化し半分本心半分だった。もし今一緒にいるのが自分じゃなくても、同じセリフを言ったのだろうかと思ってしまう部分もあったから。
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