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第13話
ファミレスを出て2人で歩きながら、圭太は不意に聞いてみた。
「これからどうする?帰る?」
すると、琉季は『なぜ聞く?』と言わんばかりの表情を見せた。
「なんで?」
「さっき疲れたって言っていたし、もう帰った方がいいんじゃないかと思ったから」
「確かに今日は疲れたけど、お前は別!」
圭太はどういう意味か分からず、きょとんとしてしまう。
「え?どこか行くの?」
「お前、純粋なフリするなって」
琉季は笑うが、圭太は分からない……と、思考を巡らせたところで気付いてしまった。歩いているうちに、ホテルが建ち並ぶエリアに来ていたことに。
『やっぱりそういうことか……』
心の奥底では期待していなかったといえば嘘になるが、いざここまで来てみると入るのにも緊張してしまう。純粋ぶるわけでもないけれど。
「ねぇ、大丈夫なの?本当に。心配で」
「疲れぶっ飛んだって言っただろ?平気だって。それに……」
「それに?」
「お前、この前は覚えてないって言ってたじゃん。そんなんイヤだから、リベンジ」
「は!?」
圭太は琉季に腕を引っ張られてホテルへと連れて行かれた。
「今度は、覚えてないなんて言わせねぇからな」
2人で、何となく距離を取ってホテルのベッドの上に座る。何とも言えない空気に、緊張感が増していく。
「何か、いつもこうしてお客と……」
つい、そこまで言ってしまい圭太は後悔した。どうしてか、琉季のそういう他の人との関係について聞きたくないから。
別になんとも思ってなければ、お客との関係を聞いたところで気になりなどしないはずなのに。
「えー?まぁ、望まれたらするし、断らないかな、あんま。そうそう、初回で来た人ともしたことあったよ」
聞いて愕然とした。薄々そういうものだとは頭では感じていたし理解しているが、実際に告げられると結構な衝撃が来る。
「そ、そうなんだ」
「驚いた?まぁ、そうだよな。でもさ、そんなもんだよ。男相手のホストでも女相手のホストでも、みんな枕はやってる」
やっぱりそうなのか。圭太の顔が蒼白になっていく。
「それにさ、俺はプライベートではヤラないって決めてんだ」
そんなこと、教えられてもどうしろというのだ。
「そうなの?」
「あぁ。金にならないセックスはしたくないからな。自分に金使ってくれてるんじゃなきゃ、相手はしない」
「……へぇ」
返事のしようがない。つまり、琉季は金のためにセックスをしているということなのだろう。
「わ、分かった……もういいよ」
それ以上、琉季のこういうことは聞きたくなかった。
「何だ。そう固まんなよ」
琉季が不意に頬に触れてきた。圭太はぴくりと反応をする。
「いつもと違ったコミュニケーション、しようぜ」
言うなり、圭太はベッドに押し倒された。
「ひゃっ」
「なんだ。可愛い反応すんだな、圭太。なんか初々しいってヤツ?」
琉季がクスリと笑う。
そんな」
圭太は、顔の両側に手をついて見降ろしてくる琉季と、目を合わせるのが恥ずかしくて、顔を逸らした。
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