21 / 63

第21話

それから、2ヶ月連続で1カ月の”締め日”に圭太はClub Dandyguyを訪れて高級シャンパンやバーボンのボトルを下ろし、琉季はどちらの日とも売り上げが店のトップとなり、ラストソングを圭太の隣で歌ってくれた。ベタベタに甘いバラード曲を。 そして、その2日ともアフターへと繰り出しホテルへと連れて行かれて琉季のペースで朝まで抱かれた。 激しくて、琉季がただ欲を満たしているだけにしか、圭太には見えなかった。 でももう、心も体も絡めとられて支配され、身動き取れなくなっている。なんでも琉季の言うがままなのが、自然の様な気がしてくる。それが恋かどうかなんて分からない。けれど、がっつりと琉季に持っていかれてしまった。  夏もとっくに終わり涼しくなったある日の午前2時頃、圭太はバーの仕事を終えて帰るつもりで店を出た。 「お疲れ、ケイタ!今日は混んだな」  ほぼ同時に店から出てきたアキラに声をかけられた。 アキラは圭太と大体同期であり、歳も同じということもあって仲良くしている。バーのママにも双子の兄弟のように2人して可愛がってもらっている。 「昨日よりも忙しかったよね。お店は盛り上がるのはいいことだけど」 「だな。なぁ、腹減らないか?何か食いに行こうぜ」  そう問われて、何となくこの日は疲れたのもあって断わろと思った。 「ごめん、今日は真っ直ぐ帰るよ。今度行こう」 「そっか。分かった!今度行こうな」  アキラがポンと圭太の肩を叩いた時、圭太の携帯電話が鳴った。 電話の着信音が聞こえ、アキラは「それじゃ、またな」と小声で言って帰っていった。アキラに「ごめんね」と言いながら携帯電話のディスプレイを見ると、琉季からだった。こんな時間に電話をくれるなんて珍しい。 電話をもらえた嬉しさと何かあったのだろうかという不安がない交ぜの、そわそわした気分で電話に出た。 『けい、た……』  琉季の声には違いないようだけれど、なぜか苦しそうでやっとの思いで声を発しているように聞こえる。 「琉季さん!?どうしたの?」  心臓がどうしようもなくザワつく。一体、何があったというのだろう。

ともだちにシェアしよう!