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第27話
それだけしか言えない。あまりプライベートな話をするのも良くないから。
「へぇ……。あ、そうだ。俺が店に行かなければ客にもならないし堂々と付き合えるな。何で直ぐに気付かなかったんだろう、俺」
閃いたように菅野は言うが、そういう問題ではない。
「それはそうだけど、僕は……」
煮え切らない圭太の言葉に、菅野がハッとした顔をした。
「あ、もしかして、既に恋人とかいるの?」
「恋人はいないよ。でも……」
はっきりと言えばいいものを、圭太も自身の言葉で言わないので、菅野は察したらしい。
「あー、好きな人はいるってことだな。でも、もしかしたらこれから先、俺にもチャンスはあるだろ?」
そう言われた瞬間、圭太は即答した。
「僕は、菅野さんに贔屓にしてもらっているけれど、想いに応えることはできません」
菅野は面を食らったようだったが、苦笑してすっくと立ちあがった。
「そうか。今日はここまでにしておくよ。俺も諦めないから、そのつもりでな」
そう言い残すと、菅野は帰っていってしまい圭太は一人取り残される。
何だか嫌な予感がしないでもないので、気持ちが落ち着かない。
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