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第29話
花火の日までは仕事で時間がなく、琉季と再会したのは花火の日。久しぶりに会えるので、いつになく圭太はドキドキしていた。
「なんだ、お前。緊張してないか?」
「だって。琉季さんと久しぶりに会ったから……」
琉季は一瞬だけ固まったようだが、すぐに笑って見せた。
「何言ってんだよ。さ、先に場所取るか?」
「そうだね」
会場は物凄く混雑するので、早めに2人で現地を訪れた。
花火は川沿いで打ち上げられるため、川の土手で見る観客で埋め尽くされる。
まだ明るいうちに、座る場所を確保しなければならないだろう。
まだ午後5時くらいだけれど、既に会場は人でごった返している。
「もう混んでるなぁ。これじゃいいとこ取れないかもしれないぞ」
「そうだねぇ。取り敢えず座れればいいかな」
そう言いながら2人でキョロキョロと場所を探していると、琉季が声を上げた。
「あっ」
「どうしたの?」
「あそこ良さそうじゃね?」
琉季の指した方向を見てみると、スペースが空いていて花火も見やすそうな位置のようだ。
花火は、位置によっては見る際に首が痛くなることがあるが、そこならその心配もなさそうだ。
2人分のスペースにシートを敷いて、荷物を置いた。そして、近くに並んでいる屋台に2人揃って買い出しへと出かける。
屋台までの道も屋台の並ぶ通りも、人で溢れ返っていてなかなか進み辛かったが、何とかビールと食べ物を買い込んだ。そうこうしているうちに、日も暮れ始めてきた。
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