33 / 63

第33話

 数日後、圭太はClubDandyguyを訪れていた。時間があったし、琉季の顔が見たかったから。 「なぁ。今日暗くないか?どうした?」  琉季に心配そうに顔を覗き込まれて、圭太は言い淀む。 「そ、そんなことないよ……」  琉季に心配させてしまった。心配してくれるのは嬉しいけれど、煩わせたくないので頑張って平静を装おうと心に決めた。 しかし……。琉季が人差し指で圭太の額をチョンと突いた。 「そんなことなくないだろ。何があったんだ?」  誰かに相談したい気はする。けれど、ウリ専の店の人はおろかバーの人たちなどにだって話してはいない。 琉季に話しても良いものだろうかと、大いに躊躇してしまう。 「固まってないで、話してみなって。俺でも役に立てることあるかもしれないだろ?」 「琉季さん……」  琉季は、普通の頼りがいのありそうな兄貴のような顔で言ってくれた。 ヘルプもたまたまいないし何となく話したいと思った。 今日の瑠季なら、ちゃんと話しを聞いてくれそうな気がしたから。 「実は、ウリ専のお客さんに迫られてて……」  瑠季は一瞬だけ目を見開いたが、すぐに表情は元に戻った。 「あー、なるほどな」 「一度告白されたんだけど、お客さんと私的に付き合ったりできないし……」 「真面目だな、お前。隠れてつき合えばいいじゃん」 「いや、バレたら僕が働けなくなるし、第一僕の気持ちは……」  自分の心は瑠季にある。他の人になどこれっぽっちも興味はない。 なのに瑠季は他の人と付き合えと言うのか。 圭太の気持ちを知らないとはいえ、酷なことだ。 「何、お前他に好きな奴でもいるのか?」 「な、何で?」  圭太は思わず焦った。なぜそんなことを聞くんだろう。興味ないなら聞かないで欲しい。 「……ちょっと聞いてみただけだよ」 「そか……」  何だ。ただそれだけかと圭太は少し寂しく感じた。 瑠季はあまり動揺してくれないし、所詮は他人事なのだろう。  自分が想いを告げたとしても、きっと瑠季も『客とは付き合えない』と言うのか。 少しだけチクリと心が痛む。 「もしまた迫られたらさ、店を出禁にしてもいいんじゃないか?お前は優し過ぎんだよ」 「うん、そうだね。そうする」 圭太が言うと、琉季はホッとしたような顔を見せた。

ともだちにシェアしよう!