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第33話
数日後、圭太はClubDandyguyを訪れていた。時間があったし、琉季の顔が見たかったから。
「なぁ。今日暗くないか?どうした?」
琉季に心配そうに顔を覗き込まれて、圭太は言い淀む。
「そ、そんなことないよ……」
琉季に心配させてしまった。心配してくれるのは嬉しいけれど、煩わせたくないので頑張って平静を装おうと心に決めた。
しかし……。琉季が人差し指で圭太の額をチョンと突いた。
「そんなことなくないだろ。何があったんだ?」
誰かに相談したい気はする。けれど、ウリ専の店の人はおろかバーの人たちなどにだって話してはいない。
琉季に話しても良いものだろうかと、大いに躊躇してしまう。
「固まってないで、話してみなって。俺でも役に立てることあるかもしれないだろ?」
「琉季さん……」
琉季は、普通の頼りがいのありそうな兄貴のような顔で言ってくれた。
ヘルプもたまたまいないし何となく話したいと思った。
今日の瑠季なら、ちゃんと話しを聞いてくれそうな気がしたから。
「実は、ウリ専のお客さんに迫られてて……」
瑠季は一瞬だけ目を見開いたが、すぐに表情は元に戻った。
「あー、なるほどな」
「一度告白されたんだけど、お客さんと私的に付き合ったりできないし……」
「真面目だな、お前。隠れてつき合えばいいじゃん」
「いや、バレたら僕が働けなくなるし、第一僕の気持ちは……」
自分の心は瑠季にある。他の人になどこれっぽっちも興味はない。
なのに瑠季は他の人と付き合えと言うのか。
圭太の気持ちを知らないとはいえ、酷なことだ。
「何、お前他に好きな奴でもいるのか?」
「な、何で?」
圭太は思わず焦った。なぜそんなことを聞くんだろう。興味ないなら聞かないで欲しい。
「……ちょっと聞いてみただけだよ」
「そか……」
何だ。ただそれだけかと圭太は少し寂しく感じた。
瑠季はあまり動揺してくれないし、所詮は他人事なのだろう。
自分が想いを告げたとしても、きっと瑠季も『客とは付き合えない』と言うのか。
少しだけチクリと心が痛む。
「もしまた迫られたらさ、店を出禁にしてもいいんじゃないか?お前は優し過ぎんだよ」
「うん、そうだね。そうする」
圭太が言うと、琉季はホッとしたような顔を見せた。
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